今日で三日目
ご主人様は
遠い街で
汗を流し
鉄筋を運び
組み立てている。
繁殖し
増え続けている
金持ちの為の
立派で
豪華な住処・・・
広いブタ小屋を
つくりあげているんだ。
僕は出窓に座り
考え込んだ。
ご主人様の
未来について。
請求書の中に
請求書は埋もれ
政府機関に
最小限の希望も
消し去られ
人間の群れに
追い出され
出口の見えない
洞窟の中を彷徨う
かわいそうな
僕の
ご主人様。
働いても
働いても
何も変わらない
へんてこりんな
ご主人様の人生・・・
増えていくのは
拾われた僕達だけ。
僕達と
ご主人様に
未来はあるのかな。
僕は出窓に座り
祈ったんだ・・・
ご主人様の
無事を。
あんたも
祈ってくれ。
僕の
友達だろう!
鼻が痛い
痛いんだ。
一週間分の
キャットフードに
ハエが集まり
喰い倒され
ちっとも動かない。
あんたは
わかるよね!
僕の
この気持ちが・・・
この
何とも言えない
やるせない悲しみが。
そういえば、
向かいにある
金持ちの
大きな金庫へ
人間が集まり
喰い倒されたらしい。
臭い墓場に
なっているらしいけど
あんた、
知ってた?!
それより、
申し訳ないが
糞塗れの窓を
拭いてくれないか
目が痛い。
痛いんだ。
あんたは
僕の
友達だよね・・・・・。
梵鐘の響きに
導かれ
参りました。
死者の魂の声に
呼び出され
祈りました。
御灯明に
照らされ
微笑む仏さま、
その頬は
懐かしい
桃色でした。
お坊さんの
唱える
清らかなお経が
私の体を
すっと
通り抜け、
祭りに賑わう
すすきのへ
ゆっくりと
滲んで行きました。
しばらく
目を瞑り、
小さな撞木で
自分のこころを
突いてみました。
不思議な
音が
私の中から
鳴りました。
どうせ、
一晩の内に
散る花なの。
どうせ・・・
あすには
死ぬ花なのよ。
それでも
欲しいでしょう?
どうしても
摘みたいでしょう?
二足で夜を這う
奴がいたの。
二足で
奴の夢に
化ける
赤い花がいたの。
甘くも
苦くも
美しくもない花へ
強くも
大きくも
賢くもない
弱い虫が来たの。
しかし
じめじめした
奴の欲望は
猛毒の蠍より強く、
粘々した
赤い花の血は
噴き出すマグマより
熱かったの。
それでも
虫は
花を欲しがり
花は
虫に刺されるのを
夢見ていたの。
やがて
奴は赤い花を
赤い花は奴を
殺してしまったの。
結局、
二人は死んだの。
それでも
欲しいの?
赤い花が・・・
欲望が・・・・・。
ほら、
あっちにも、
こっちにもいるよ。
咲き乱れて
いるのよ。
どう!
獲物に
餌食になってみる?
日が沈むと
あなたのことを思う。
柔らかな
雲のような
あなたの魂、
一度でいいから
あなたに触れたい。
私の
知らない私を
あなたのもとへ
連れて行ってあげたい。
私の
知っている私を
下界の底から
引っ張り上げ
あなたの宇宙へ
飛ばしてあげたい。
日が沈むと
あなたのことを思う。
真理が
内面が
膀胱が
爆発しそう。
後もなく
消え去る魂なの?
曼荼羅のように
二度と逢うことのできない
あなたなの?
私は
美醜の分別がわからない
善悪の区別がつかない・・・
日が沈むと
あなたのことを思う。
自分の体の
何より
正直で
働き者で
怠慢で
怖い足。
それを
合わせて
あなたを
思う。
すべてが
すべてを
傷つけあう世を
踏みつぶしたいと思いながら・・・・・。
あなたが
首を振りながら
涙を流しているのが
見える。
日が沈むと
その涙が
私には見える。
静かに
静かに
私は
足を
合わせる。
あなたが
そこにいると
信じながら・・・。
破裂しそうな
胸元を
揺らして
走る女が
目の前に。
イヌの
リードを
強く引っ張り
携帯電話を
操作しているやつが
目の前に。
酒に酔い
ふざけた遊びで
川に飛び込み
溺れる者が
目の前に。
飲み干した
ペットボトルを
平気で
階段に置いていく者が
目の前に。
仲良く
水浴びをする
白いカモメと
黒いカラスが
目の前に。
炭火を焚いて
肉を貪り
煙草を吹かす
若い男と女が
目の前に。
橋の下、
何かをしている
無頓着な男が
目の前に。
夜明け前、
男の
ギターケースの中から
出てきた迷子の蟻が
私の
目の前に。
夢の中、
迷子の蟻を
探している
仲間の蟻が
目の前に。
目覚めた朝、
髭を剃り落とした
見覚えのある
橋の下の男が
目の前に。