半分

まるい月を
見上げるのが
怖い

片目を左手で隠し
半分欠けている
月を眺める

月は
私のすべてと
あなたの
すべてを
知っている

それに比べると
私は
あなたのこと
何も知らない
あなたもまた
私のことを
何も知らない

これでいいのだと
思いつつ
あなたのことを
半分
知りたいと
月に願う

知らないと
理解も
出来ないからね


詩のない世界

言葉が
私の
心の中から
遠くへ
離れて行ってしまった。

待ち続けていても帰ってこない

言葉を
裏切った私は
もう二度と
言葉に逢えないのだろうか

心が寒い
とても寒い

私は
濡れた雪道に座り
両手で雪を掴み
汚れた心を磨こうとしたが
雪の真っ白な優しが怖くなり
走り逃げ去った
・・・・・
自分の愚かさを知った

心が寒い
とても寒い

詩のない世界は
地獄より恐ろしく
天国より儚い

詩のない世界は
愛のない世界

言葉がなけりゃ
詩を書けないだろうか
言葉がなけりゃ
詩を唄えないだろうか

心が寒い
とても・・・

しかし、
私の
傍にいる
あなたは
とても温かそう。

何故か私、
悲しくなるけど
もう、
あなたからは何も貰えないよ

失くした言葉が
いつか
雪と共に
帰ってくるのなら
この悲しみは
消えるのだろうか

凍るほど冷たい
この心を
冬は笑う・・・
くそ悲しい、
美しい笑顔でね。








立ちくらみ

酸素
原子番号8
お前は

何処にいる?!

乱れている私の脳を
青く塗りつぶして!

片目を突っつく
耳鳴り鳥を
今夜
この手で
捕まえてお前にやる。

半透明の
お化けになって
今夜
白い言葉をお前に
教えてあげる。

残りの力が
とろけてしまう前に
私を
抱いて、
私の中に
入って・・・深く、深く・・・




蚕と糸車

家の隣にある小さな橋を渡ると
桑の畑があります。

私が飼っていたカイコは
桑の葉が大好きでした。
私は毎日カイコの世話をしました。

ある日、
カイコはわたあめのように
ふわふわと膨らみ、
白く丸く体を変えました。

マユの中で、
一回
体をきれいにして、
もう一度
生まれ変わるのでした。

不思議な
不思議なことです。

熱を出し、
怖い夢から目を覚ました
ある日のことでした。
母の姿を探すと、
うす暗い小屋の中で、
窓を差す僅かな光を浴びながら
糸車を回していました。

母は太い指先で
白い糸を紡いでいました。

白い糸は
私が飼っていたカイコです。
羽が生えるのを
ドキドキしながら
待っていたのですが
カイコは白い糸になりました。

泣いている私に母は
こう言いました
カイコは羽が生えても飛べないの!
何回も生まれ変わるけど、飛べないんだ!
でもね、
やわらかなきれいな糸を
私たちに残してくれるの・・・
そして
その糸は大事なお金になるのよ!

カイコがお金になるなんて
・・・・・
不思議な
不思議なことでした。


私が今思うことは
自分では自分を何回も作り直せないけど
せめて、一日ほんの少しだけでもいいから
自分が良いと思う方向へ進んでいけるように
努力することです。
多分、
カイコのように
何度も生まれ変わることは出来ませんが
新しい気持ちで日々を過ごしたい。
その中で、
まだ、逢ったことのない自分に
いつか出逢えることを願いたい。


その場所

天国でも
地獄でもない場所

天使にも
悪魔にもなれない場所

月も星も太陽も
会話の出来る場所

魂が集まり
魂が住み着く場所

その場所に
ラクダはいます
その場所で
ラクダは魂と暮らしています

ずっと
そう信じていました
ずっと
そう思っていました

私とあなたも
いつか訪れる場所

愛と憎しみを
金銀の嵐に変える場所

朝も昼も夜も
地平線を眺める場所

その場所に
ラクダはいます
その場所で
ラクダは魂を見守っています

ずっと
そう信じていたいです
ずっと
そう思っていたいです

過去も未来も
現在もない場所・・・

ラクダの長い、
長いまつげに包まれ
遠い、
遠い宇宙の声を
聴きいれる場所・・・

その場所は
砂漠です。