別れの日

五月の見えない風の中へ
私の肺をつついた鳥が
飛んでゆきました。

血管を貫通する
嫌な針を
お口にくわえ
パタパタ
飛んでゆきました。

嬉しそうな
ちょっぴり悲しそうな
別れの日でした。

里帰り

板一枚下は地獄・・・
わたしは
海がとても怖い。
それなのに
一人でよく海へ行く。
怖いのに何故か
不思議と心が落ち着く。

今回の里帰りではじめてわかったことがある。
母が海女だったことをお姉さんから聞かされたのである
そうか・・・
だから母は口癖のように
死んだらカモメになりたいと言っていたのか・・・

母が潜った海
生きるために
生きた命を頂いた海

わたしが
眺めているこの海は
わたしより
母のことを知っているかもしれない。
海は広いね
本当に広いね
そして深いね
悲しいほど深いね

カモメさん
・・・ありがとう

曖昧

いつか
またねって
聞かれたくも
言われたくも
なかった。
さよなら、
達者でな・・・
これで
よかったんだよ。

真薬

いつ
どこで
誰が
何の為に
作っているのか
わからない。

誰が
どこで
いつ
何の為に
飲むのかも
わからない。

破れそうな
私の
心臓を治す
唯一の方法
それは
詩を
飲むこと。

副作用もなく
唯一
心臓まで届く真薬。

その
薬は
何処に
ありますか。

トモダチ

わたしは
私の
唯一の
友達。

いちばん
近くて
いちばん
遠い
たった一人の
友達。