私は欲の木

切り落とせるのなら
切り落としたい。

根を引っこ抜けるのなら
引っこ抜きたい。

欲の重みに耐え切れず
ひび割れる体。
欲の悪臭に塗れ
枯れ果てる心。

醜い枝を
伸ばし続けている
愚かな私。
腐らすほど
増え続けていく
欲の果実。

全裸を
枯らしてしまいたい。

きっとわたし、
神様に見られている。
神様は実に恐ろしく
わたしは目を閉じ
跪くしかない。

昔出会った、
無欲の魂を持つ
こころの美しい木。
お日様に向かい
溢れ出す詩声を響かせ、
無邪気のまま
精一杯歌い続けたあの木。

今はどこに、どこにいる?

もしかしたらわたし、
あの木を
殺したのかもしれない。

欲ほど怖い生き物はない。
全てを食い尽くし、破滅させる。
言葉にならないこの悲しみを
救えるのは
無欲の魂を持つ木だけ、
あの詩声だけ・・・。

いつか
あの木のようになりたいと
切実に願った祈り。

神様、
あの木は
本当に死にましたか?
この世には
いないのですか?

わたしを
枯らしてください・・・
生まれ変わりたいのです。



いいかい?

倶知安の水は美味しい・・・
何でも美味いんだ。

いいかい?

ここに座ってお茶でも飲もう!

俺以外、皆、年寄りだな~

俺は後で出掛けるんだ!
車が迎えに来る。

ところで、
あんたは
さっきから働いてばかりで、
かわいそうで、かわいそうで・・・・・。

倶知安の水はよ、美味しいよ!

いいかい?

ここの、
俺の隣に座ってお茶を飲め!

それから
一緒に車に乗って出掛けよう。

俺のスーツは良いスーツだからよ、
あんたも気に入ると思うよ!

「お~い!温かいお茶二つちょうだい・・・。」


毎日がドラマです。
今日はおじいさんとデートしました。
初めてです。
男の人にお茶に誘われたのは。
胸がドキドキしました。
倶知安で生まれ過ごしたおじいさんには
今いるこの場所も倶知安なのです。
おじいさん!
また、誘ってください・・・。


氷のキャンドル
















 
タバコが切れた。

丁度、コーヒーもなくなり、
いつもとは違う店まで軽く散歩。

群青色の空を見上げ星をさがした。

星の見えない空は、鳥のいない山。

あっ、思いっきり雪道に足を滑らせ転んだ。

痛い・・・。

あれ!?
なんてキレイな灯! 

雪道の上に座ったまま、
しばらく、氷のキャンドルを眺めた。

誰かさんのお陰で、
心和む今宵。

いつの間にか、曇り空には白いお月様。

雪の降りだしそうな静かな空気。

あぁ~ いい夜だ!

お尻は痛いけど、心のすがすがしいいい夜だ。

写し出す

在るものを写すには
勇気がいる。

在るものを写さないのも
勇気がいる。

嘘でも、
真実でもある「在るもの・・・」

それは「物語」。

私は見る・・・
微かな境目の
何かを見る。

濁るほど光を増す、
この目を信じて見る。

「在るもの」へ
見られたいが為に
見続けている。

存在は、所詮、幻。
幻というのは、
人の、
一夜の夢に過ぎない物語。

それらを、
批判するかのように
真正面から眺める、
無礼なこと、
私はしたくない。

閉じ込められた、
在る幻の世界。
そこから漏れ出す数々の息。
眠る私の細胞を引き起こし
白黒の世を流浪し続ける物語。

消えないしつこい
悲しみを畳みながら
写真を広げる
私だけの夜。

そっと、
救いの手をつかむ。
はかり知れない強い力、
私はまた自分を信じ
在る明日へ生ける。


巫女と葡萄

特別に暇な時は
ひとりで
ゴミ捨て場の
山ヘ行きました。

そこから覗く巫女の家

運がよければ
巫女に逢えるのです。

白鳥のように白く、
蟻にも
野良犬にも
ゴミにも
わたしにも
天使のように
優しい巫女さん。

巫女の庭には
切り絵のような
不思議な葡萄の木があります。

低く、重く
くねくねと伸び続ける蔓。

いつか、
私のいる小さな村が
葡萄の蔓に覆われたら
大変です。

葡萄はおいしいけれど
葡萄の蔓は怖いと思いました。

その日も
巫女は葡萄一房、
わたしの手に持たせいいました。

「オンミの
涙の粒を召し上がれ!
涙の種は飲み込んじゃだめよ・・・・・
それから
もう、この、ゴミ捨て場の山には来ないでね!」

葡萄は涙の粒・・・
種は、飲み込んじゃだめ・・・。


無性に葡萄が食べたいときがあります。
食べたくなくても、
ずっと見つめていたい時があります。
葡萄は、
わたしには、
いつまでも不思議な果物なのであります。


バグダッド・カフェ

















大好きな映画
バグダッド・カフェ。

砂漠の、蜃気楼のようなカフェでの
様々な人間模様が描かれている作品です。

何度も観るたびに、女同士の友情を感じました。

たったいま、偶然にも、隣の部屋から聴こえるギターの音色、「Calling You」

そして、また偶然、このような言葉を頂きました。

「捨てたものは戻ってこないが、
失くしたものは戻ってくることもある。」
 
映画の中での台詞ではありませんが、
この言葉を目にして、なぜかわからないが
バグダッド・カフェの映像が思い浮かびました。

バグダッド・カフェにはコーヒー・マシーンが壊れ、コーヒーの入った
黄色いポットを使っています。
結構、可愛らしいポットなんですが・・・。

私には、ポットの苦いコーヒーの中に、
この言葉の味が隠されていたような気がしました。

それぞれの人々がそれぞれの問題を抱え何かを求めている。
居場所なのか、出会いなのか、何なのかはよく分からないが、
最後は、皆が、笑っています。
失くした何かを取り戻したかのように・・・。
私は、そう思いました。


今日は不思議にも、
バグダッド・カフェのストーリーが自分へと繋がる一日でした。

こころが潤い感謝の気持ちです。

昨夜は久々高熱を出し、うなされ、体が痛かったのですが
今はすっかり元気になりました。

ハングルの言葉を探し、ハングルを丁寧に書いてありますね!。
凄い・・・です。びっくりです。

映画「バグダッド・カフェ」、ジャスミンとブレンダ、
また観たくなりました。


言えないよ。

石壁、細い道の終わり・・・

全ての迷路の行き止り 

風に揺れ動く
板一枚の扉だけが
静寂さを壊している。

まさか、
ぼろい扉の向こうが
理想郷への入り口だとは・・・。

未知の世界を知るとき、
なぜ、
懐かしさに包まれるのだろうか。

いつの間に門番に成りすまし
扉に鍵を掛けている私。

煙草を吹かしながら
小人の紳士が現れ、
門番のわたしの肩に
紙切れを貼り、
螺旋階段を下りてゆく。

その後、
センスを扇ぎながら
貴婦人が現れ、
シンバルを鳴らす猫と
螺旋階段を下りてゆく。

鬼のような能楽師、
マリアのような修道女、
もしくは娼婦。

ギターを抱えた演歌歌手、
土門拳の目つきをした観音様。
 
喜劇のサーカス団、
悲劇の思想家、
ユートピア描く夢想家、
舌を切られた詩人。

それぞれの人が、
わたしの体に、
それぞれの紙を貼り
扉の中へ、
理想郷の世界へ入ってゆく。

残念だが
門番のわたしには
この、板一枚の扉を超えろ事が出来ない。

扉の前に蹲り
わたしは泣いた。

紙切れ一枚一枚
剥がしながら、
紙切れ一枚一枚
見つめながら・・・・・。

何故かって?

言えないよ・・・・・・。

雪花

又しても、 
新しい夢を
見させようとしているのね。

もう、
騙されない。

白い花びら舞う
暗闇の中、
無垢の銀の世界
いつ見ても儚すぎる。

冷たい・・・
冷たい・・・

枕を追い潰す雪花

あぁ、夢であってほしい。
これ以上
わたしに夢を見させないで!

美しくも汚らわしいこの世へ
君は名残惜しいものが
まだ残っているのかい?

積もり積もって
時が来たなら消え行く
舞い降り咲いては
時が来たなら消え行く。

どうして、
この事を恐れているのかね。

雪花、
君の夢だけを見てちょうだい。

わたしには
これ以上見る夢がないのだよ。

ただ、
暖かい枕を抱いて眠りたい。

新しい夢を見させないで・・・。

突然・・・

早朝、娘が布団の中で、キツツキのように
口もとを揺らしている。
体が冷たくぶるぶる震えて・・・風邪をひいたな!
その後、熱が出はじめ頬は真っ赤。
急いで薬を飲ませ、様子を見ながら時計を見ると、
朝の9時・・・・あ~仕事に間に合わないな~というより行けない・・・。
職場に電話を入れると、管理者のお子さんも、
今朝、熱を出しているとの事。
親切にも管理者は、「娘さんが治るまで休んでいいよ!」と言う。
そんな風に言われると余計に申し訳ない。

とりあえず今は熱も下がり寝てはいるが、
忙しい朝の時、このような事が起きると焦ってしまう。
昨日の夜まで元気もりもりだったのに。

今まで、私の身の回りに突然起きる出来事に
私は私なりに自分の力で順応して来たと思っていたが、
これは大きな間違いである。
小さな事から大きな事まで乗り越えてはきたけれど、
私一人の力で乗り越えて来た訳じゃない。
必ず、誰かしら何かしらの支えがあって、励ましがあって
見守り続けてもらい、今の私があるのだ。

自分が、家族の誰かが、体調を崩したり病気にでもなると
本当にこころが重苦しい。
迷惑をかけたくないと思い無理をすると、
余計に悪くなる一方。
体が弱っていると、言葉にならないほど
こころもぼろぼろになるが、一番の薬は時間に身を任せる事。
それから、何らかの支え。一言でも、優しい眼差しで何でもいい。
お互いの・・・・・。

たかが風邪かもしれないが、
娘の風邪の息を嗅ぎながら早く元気になってほしいと思う。

そして、仕事と母の看病で忙しい毎日を送っている友達!
お母さん!元気に元気になって下さいね・・・!

人は、体と心の痛みを通じて、
さらに深く結ばれる。
深い愛に気づき、この先
突然何が起きても何とか乗り越えられる。
私は、それだけは強く信じている。

青春

青春の短い春は
とこかへ消えた。

遠ざかる
やまびこのように
姿をなくし、

沈み行く
夕日のように
赤い血を吐き、

招かざる私の青春は
流れ星のように
幕を閉じた。

世の中の、
とろっとした青の群れ。
影の渦巻き・・・。

私は、
敗れた旗を掲げ、
ピカソの自画像を
見つめながら
金星の輝く未明、
屋根裏部屋から
飛び降りた。

勿論、
死んではいない。
死のうとした訳でもない。

こころに残っている
センチメンタルな火種、
私の守り神
・・・・・・・・。

雪の降る夜、
青春の短い春を
あの人へ聞かせたら
鼻で笑う。

かかとを無くし、
いつまでも
よろよろと
つま先で歩く私を
あの人は笑う。


どうでもいい青春の話。
私も鼻で笑う、笑えないけど・・・笑っている。
青春は、一度きりで、随分だ。

待ってたよ!

休んだような、休んでないようなお正月。
偏頭痛の続く日々でした。

もっと休みたい・・・でもね、仕事しなきゃ。

重い頭を傾けて職場へ行くと
私の顔を両手で包み
「待ってたよ!ずっと・・・」
ある、お年寄りの方が言う。
垂れた瞼の奥、少しだけ見える瞳。
お婆さん、泣いていました。

私はそっとお婆さんを抱きしめた。
すると、
「おまえさんは誰じゃ?」
えっと・・・「私、誰かしら?!」・・・普通に呟いていたら
お婆さんが私の耳元で囁きます。
「大ばば!おらの大ばば!・・・」

私、何故か嬉しかったです。
しばらく、私(大ばば)とおばあさんは
昔話をしました。
これほどかみあうお話、ただ嬉しかったです。

日々、何もかもが勉強です。
皆さん、立派です。

明日は私、誰になるだろうか!
何でもいい・・・・・。
意外と何にでもなれる自分、驚きですね。

川の辺で

夕暮れの道、
一月の
寂しいこころを連れて
歩きたかった。

ひとりで・・・。

いつもの川の辺、
そこまでの
わたしの足の歩数は
大体千百歩位。

冷たい雨が雪にかわり
微かな灯りを浴びながら
流れる川へ溶けて行く。
ひとつになり、
地上の果てから果てまで
まわりまわって、
離れて、 
また、ひとつになる。

雨も
雪も
川も 
夕暮れも
私も・・・・・。

薄暗い足元
胸の奥まで沁みこむ夜風。

ひとりで呟いた。

「故郷の川は、元気でいるのかな?!」。


現実に戻された私は
晩ごはんのおかずは何にしようか考えながら
川を後にし雪の積もった土手の上の道を歩いて帰った。

故郷が恋しいとき、
いつもひとりで豊平川へ行く。
この川とひとつになり、
流れて流れて、故郷の川へ逢いにいく。

いつ辿り着くのかはかわからないが、
今は、
いつか逢える故郷を想うだけでいい。
こころの中にある故郷・・・
一月になると、いつもより恋しくなります。

夢を見た

広い、広い野原に
輝く光。
オーロラのように
星の群れが踊っています。
本当の事です。

満天の星空、天の川。
なんて綺麗なんだろう!

そして、
野原には三人の女がいます。

見知らぬ人達もいましたが、
はっきりと話をしているのは
三人の女です。

くの一の艶やかな髪には
羽の髪飾り。
留萌娘の鬣は力強く、
わたしの短いお河童髪は笑える。

三人揃って黒髪・・・。
三人揃って、
今まで見たことのない、
初めての髪型。
三人とも髪の毛を切り、
三人は笑っています。

あまりにも美しすぎる星空の下で・・・。

本当の出来事のような、
凄く綺麗で、面白い・・・
そんな夢を見ました。

初詣

焚き火を囲み笑顔の甘酒、
皆、いい顔していますね。

0時30分、豊平神社。

後ろに並んでいる関西弁の参拝者、
前に並んでいる若き恋人達、
こども達のはしゃぐ声、
寒い中、
半そでのままボランティア活動をしている
ボーイスカウト隊員の姿、
たこ焼き屋台の老夫婦。
皆さん、微笑んでいます。

皆の口から流れだす白い息が混ざりあい、
温かい灯りをともしています。

神様、嬉しそうに
皆の顔を見つめています。

皆さん、よいお年を!
そして、明けましておめでとうございます!