何処に行けば 

今いるここで
見つけられない。

今いるここでは
時間だけが過ぎ行き、
次元の持ち主に
鞭打たれてばっかりである。

逆らえないまま
ゆらゆらと
過ぎ行く私。

今いるここで
見つけられないのは、
何処に行っても
見つけられないのだろうか。

私には、
生まれたときから
何か忘れたものがある。
形のある、形のない
重みのある、重みのない
分からない何かが。

いつも 
探し続けている夢を見る。
いつまでも、
歩き続けている夢を見る。

岩の裂け目に挟まれた、
幼い白い蛇の目、
わたしはその黒目に映り、
その黒目はいつまでも夢をみている。

抜けられない苦しみをしらず、
岩そのものが、
自分の体だと思っているのは
蛇なのか、私なのか。

何処に行けば
見つけられるのだろう!
何処に行けば
気づくのだろう!・・・
・・・あ!むなしい夢ばっかり
見続けている。

行けよ!岩から離れて。
夢よ!私を歩かせないで。

私は、
今いるここが、いいのだよ。


あれは、何?

なにかな、
あの光は・・・

とても輝いているけど、
とても綺麗なんだけど、
なぜか儚い。

娘の
はじめての
星への感想。

そうね、
儚い光よね・・・。


神秘的な冬の夜空、
ある日、
私は輝きのない
星の窪みをみつけた。

丁度いい窪みだ!

孤独を羽織り
体を少し凍らせ
ゆっくりと夢でもみるがよい。

冬眠に入るように。


私の好きな冬の夜空。

釜山の下町の丘で、
数えた夜空の星。

あれは、何?
私は聞いた。

なにかな、
あの光は・・・。

「くだらない望み!」と、
自分に答えた。

大嫌いな夜空
大好きな夜空。

私が思うには、
星は、
「日」と「生」じゃなく
「生」と「死」。

始まりと
終わりの間の
一瞬の輝き。

地上から見上げられる
一番儚い光。

少年の月

ついて来るな!

僕は独りで行くんだ。

内側ポケットにナイフ
もっとも弱い者の
持ち物さ!

誰かを傷つけるふり、
自分を痛めるふり・・・。

聞こえるよ!
悪魔の指を鳴らすリズムが。

退屈な踊りを思いっきり披露すると
大人たちは目を光らせ喜ぶんだ!

何故かって?

面白いから、
ただ、面白いから・・・。

あいつらは、
大きな拳で
天使のラッパをぶち壊し、
永遠と笑っているんだ。
悪の為にね。

僕はもう、踊りつかれたよ!

夕暮れの捕獲、
野良犬の行き先を
僕は知っているが、
僕の行き先は
誰も知らない。

僕が決めるんだ
いいだろう?!

今まで通り、
これからも僕、独りで・・・
だから、ついて来ないで。

見つめている。
同じ場所で、
何も言わず、
照らし続けている。

僕を・・・
君だけが・・・。

その光、その良い顔、
僕は怖いよ!

僕の心の中に潜んでいる神様を
どうか許して!

もう、ついて来るな!

僕は独りで戦うんだ。

まともな大人、一人見つけるまで
僕は僕の信じる神と戦うよ!

だから、君はそこにいて。

天使のラッパが聞こえたら、
君のもとへ戻っていくからね。

その時まで、
僕を、待っていておくれ。

時には・・・

話を交わし、
笑い、泣き、うなずく。
話を交わし、
首をかしげ、怒り、悲しむ。

理解されたい
理解されない
理解されなくてもいい。

理解を超え
救われているのに、
程を知らない
恥知らずの私ね!

好きなのに、
大好きなのに、
自分のことしか考えない
こころの未熟さ。

私達は昨日も今日も明日も
話をする。

何故?
ただ、存在しているからなの?・・・。

知り尽くせない自分を、相手を
見つけたいからなの?・・・。

私を見せびらかす今の私、
今で終わり。

私を閉じ込める今の私、
今で終わり。

時には、
話のない
清らかな
存在のままでいたいの。

全身全霊で感じ取りたい。

風にうなずいている野花のようにね!
今にでも折れそうな弱さ、
それでも、向き合わない強さ。

本当のやさしさで、
時には、
うなずくだけでいたいの、わたし。

郵便局の前

雨降る冬の郵便局前、
傘も差さず
あの人立っている。

あの人、
知らない人。

雨降る冬の郵便局前、
手紙を出せず、
あの人迷っている。

あの人、
私知らない人。

だけど、気になる。
とても、気になる。

雨降る冬の郵便局前、
言葉を言えず、
あの人困っている。

あの人・・・・・
泣いている。

私も、悲しい。

雨にぬれた宛て先、
世界のどこかの国。

ねぇ、泣かないで!

あなたは、
あの頃の私のよう・・・。

雨降る冬の郵便局前、
傘の中、あの人と私。

何を話したのか・・・。

きっと、大丈夫。
これから何があっても。

冷たかったけれど、
両手から伝わるあの人のぬくもり。

あなたの
幸運を祈ります。


私は郵便局を通り過ぎるとき
こころがしめつけられるように痛みます。
宛て先のない手紙、
故郷への想い。
東京にいたあのとき 雨降る冬の日でした。
郵便局へ行き、「私、韓国へ行きたいです!」
と、言ったことがあります。
・・・・・バカですね・・・。

郵便局の前で困っている外国人を見掛けたら
声を掛けてあげましょう!。




瞬間

















一瞬の晴れ模様。

夏には、街路灯の上に、私の知る
かもめが止まっている。

橋を渡るとき、いつもこの場所で足を止め
この景色を眺める。
何気ないこの景色が私は好きだ。

友達の家に遊びに行った。

家を訪ねるのは今日がはじめて。

シャガールの素敵な絵が白い壁に飾られていて、
淡い色彩から伝わる柔らかな心地よさは
友達の雰囲気と同じ。
おしゃべりに夢中~
早いね~もう夜だ。

私は時計をよく見る癖がある。
つまり、針の進み具合をね。
昔から不思議でしょうがない・・・どうして今、この瞬間が進むのか・・・
お願い!止まれ!念じても一度も止まらない時間。

私が写真が好きなのは、 
なぜか時間に逆らっているような気がするからだ。
変わらない・・・薄れていくけれども、
あの時、この時が止まる。いや、止められる。
ちょっぴり切ないけれどね・・・。

人の体内時計は約25時間。
一日の24時間周期に修正するのは、
お日様の光。
朝、光を浴びることはとても大切なことらしい。

何から何まで世の中は不思議でいっぱい。
あれもこれもが私の毎日、今、瞬間にあり、過ぎ行く。
何も止まらない。

夏の街路灯、かもめのようにね・・・・・。

出会った人へ

過去からの人がいます
毎日、一緒にいます
しかし、この先からは
わかりません。

現在からの人がいます
今は、一緒にいません
しかし、明日になれば
また、会えるのです。

未来からの人がいます
一度も、会ったことがないです
しかし、会ったこと、あるかも
しれません。

出会いに胸膨らませる喜び、
私にはそんなものありません。

儚い執着や後悔だけが
私を苦しめているのです。

私から好きだと伝えた人 
私から嫌いだと伝えなかった人
・・・・・・。
地球の何処かで、
私のこと思う人。
あなたは、今を生きる人ですか?

私は時々思うのです。
宇宙の何処かで、
ある人のこと思う、もう一人の私を。

私は人でありながら
漂う無機質なものかも知れません。

出会った人により
漂い、彷徨い、
生かされていく物質なのです。

ですので、
私の苦しみというのは、
贅沢なありがたいことかもしれません。

私に出会った人の苦しみ、
よろしければ分けてください。
この私に・・・・・・・。

狐と山葡萄

鼻先が赤いお坊さんに
酒樽を供える狐。
私はこの目で、
見たんだ。

山奥に住む狐を
村人は化け物だと
恐れていたが、
それは嘘、真っ赤な嘘。

とても、美しかったよ。

ある昼前、
私はお腹を満たす為、
山葡萄を求め
山へ入ったんだ。

秋の訪れる山には
色とりどりの落ち葉が
静かにお休み中。

あ!あそこにある!
たくさんある!

高い木にぶら下がっている
山葡萄。
食べるのに苦労したよ。

森に差し込む薄い光・・・
そろそろ帰らなくちゃね。

その時、
酒樽を転がしながら
庵の中に入っていく狐を見たんだ。

私は、
忍び足でお坊さんと狐の話を
盗み聞きしたんだよ。

あと、
千五百六十三回、
酒樽を供えると
狐は人間になるらしいよ。

かわいそうな狐、
お坊さんに騙されているのね・・・。

家に帰った私は
少し悩み、また明日
山へ行こうと思っていたよ。

しかし、その夜
お父さん、お母さんに怖いほど叱られ
行けなかったんだ。

真っ赤な山葡萄の汁が
私の指先、口の周りに染み付いて
山へ入ったことが見つかってしまったんだ。

あの狐は
人食い化け物じゃないのに・・・。

あのお坊さんを敬う
大人たちが遥かに怖いと思ったよ。

一つだけ、
私の謎が解けたのは
お坊さんの赤い鼻先のこと。

酒樽のせいね!

手の中

明日への秘密、
早咲きしないで。

見つからないように
手の中へ
深く深く、隠れていて。

未完成の今、
夢を見させないで。

愛の為といわずに
手の中、人生の迷路を
彷徨い続けていて。

あなたの、
五本の指の隙間から 
漏れ出す光が、
私には見えるの。

あなたへ込められた
バカな願い、
あなたを狂わせる
汚れた願い・・・・・。

掴むよ!その苦しみを・・・
私のものだから。

掴んで持っていてよ!
この愛と情熱を・・・
あなたのものだから。

帰路への星くず、
冷たい私の手の中へ
一つだけお入り!

「暗い」私を照らす、
あの人の手の中・・・
優しい光で包んでおくれ!

白檀

お母さんの匂い・・・白檀。

胸に積もった苦しみ、白髪になり
透けて見える静脈、生きてきた証。

私を産んだ人。
最後まで、
私の顔を見つめた人。
今でも、
私を見守り続けている人。

その人は、お母さんです。

私は小さい頃から大好きな匂いがあります。
「白檀」です。

昔、食器棚の中に大切に保管されていた漆器。
その片隅に、大人の拳程の木香が置いてありました。
一日中何度も食器棚を開け、匂いを嗅ぎました。
そして、幼い時から、母と訪れたお寺にもいつも
白檀のやさしい香りが静かに漂っていました。

人は、時には、懐かしい匂いにより
忘れかけていた思い出を思い出し、
不思議と、今から前へこの先へ
少しでも進んでいけることが出来ます。
その先は目には見えないけれど、
きっと、その人の人生を豊かにしてくれると信じています。

豊かさは愛です。

昔からずっと好きだった匂い
とても懐かしく、とてもこころ安らぐ白檀の匂い。

思えば、以前100円ショップで売られている
白檀のお線香の匂いを嗅いで突然泣いたことがあります。

お母さんの匂いでした。

踏まれても
掘られても
痛いといわない。

ぶつけられても
異物を埋められても
痛いといわない。

どこまで、
我慢強いの?

私が・・・
痛い、痛いよ。

うまれて、かえる。

かえって、うまれる。

私、立っている。
土の上。

弱弱しい足で、
立っている。

綿雪の降る早朝、
白い毛布を被った土。

「痛かったんだ。
雪さん、ありがとう!
温かいよ!!」

何とか・・・

あっという間に研修が終わり、
最終日の試験も終わった。

今回、私は生まれてはじめて真剣に学んだ。
言葉の難しさより、何より苦しんだのは試験に対する
自分のこころの不安であった。

再試験があるとはいえ、
これからの人生において、
「私、頑張った!出来る事もあるじゃない!」と思えるような
こころの回復を望んでいたのだ。
家族や周りの人々に励まされ何とか無事に
試験に合格することが出来た。

皆に感謝します!

学校で学んだ人のこころと体、命の尊厳、
様々な精神障害、身体障害、高齢者の認知症
そして介護する人のあり方、社会のあり方・・・・・。

授業中、何度も何度も泣いた。

社会の他人は、他人ではない。
他人も自分自身も皆同じ。
皆と変わりのない生き物なのだ。

とても有益な時間を過ごした。
一緒に学んだ教室の仲間達、
先生の方々にも沢山励まされ
感謝の気持ちでいっぱいだ。

人は皆、
その人らしく生きる自由と権利がある。
どのような障害があったとしても。

学んだこと、大切に思ったことなどを
これからの仕事に活かしつつ
私自身も成長して生きていきたい。

イルミネーション



















冬の、
寒い夜空の下。

微笑みを浮かべ
イルミネーションを眺めている人々。

今、ここに、私はいない。

不思議だね。

夜空には無数の輝く星があるのに
真っ暗闇のよう。

ただただ、黒い。

夜空が、沈黙の川のように
黒く見えるのは
私のこころの写しなのか。

ハート形のイルミネーションをじっと見つめていたら
吸い込まれそうになった。
魔法の鏡のよう・・・
白雪姫の顔が映し出されそうな、
魔女の顔が映し出されそうな・・・・・。


先日、友達からの写真。
大通り公園のイルミネーション、
やはり、綺麗ですね。

おやすみなさい

夜だよ!
遅い夜だよ・・・
君の、
頑張った一日の
ご褒美の夜だよ。

疲れること
イライラすること
我慢すること
緊張すること
苦しいこと
泣きたいこと・・・

大丈夫、大丈夫だよ。

いいじゃない!

こんなにも
素敵な仲間と
同じ食卓を囲んで
おいしい食事をしているのだから。

夜だよ!
皆が
お家へ帰った夜だよ。

君の、
頑張った一日に
お疲れ様!

君の、
頑張る明日にも
お疲れ様!

いい夢みてね。

おやすみなさい!

初恋の味

長距離バスの
行き先は
憧れの海です。

海を見たのは、
十八歳。

狂おしい白い波の
叫び声が
今でも
忘れられません。

恋の知らない私は
恋がしたくて
恋人探しに
海へ行ったのですが、
信じられないほど
誰もいませんでした。

そこに、
昔、昔からあるのは、
私を待っていたのは、
青い海だけでした。

だから、
私の初恋の相手は
海です。

砂浜に書いた名前、
「バダ」

空っぽのこころ
乾いたくちびる
疲れたからだを
彼は少しだけ、
愛撫してくれたのですが、
彼の
くちづけは、
とても、しょっぱい味でした。

忘れられない
初恋の味です。


※韓国語で「バダ」は、海という意味です。

















霧のかかった道を歩いた。

私の体は朝露に潤う葉のよう。

このまま、
このままずっと歩きたい・・・・・。

脈打つ偏頭痛の痛みが
霧の中で溶けて、消えゆく。

不思議だ・・・この道が、この霧が、
ただただ好きだ。

壺の中

壺の蓋を開け、
壺の中を覗いた。

壺の中に手を入れ、
掴み取った。

いくらかな?・・・
数えてみた。

何を買おうかな?・・・
考えてみた。

悩んだ末、
思いついたのは
ブリキの貯金箱。

かちゃんかちゃん、
銅貨の音
かちゃんかちゃん、
痛い音。

壺の中を覗いた。
壺の中に手を入れた。

盗んでも
盗んでも、
母は何も言わない。

盗んでも
盗んでも、
壺は何も言わない。

まぬけで、
可笑しげな泥棒ごっこ。

母は、
ブリキの貯金箱から
銅貨を取り出し、
壺の中に入れた。

娘は、
壺の中から
銅貨を掴み取り、
ブリキの貯金箱の中に落とした。

盗んでは、盗まれる、
その繰り返し。

いつの間にか
壺の中は
銅貨でぎっしりになった。

いつの間にか、
ブリキの貯金箱も
銅貨でいっぱいになっていた。

どうして?!

どうしてなのか・・・
・・・分からない。

お気に入りの靴に
ポタポタと涙が落ちる。

洗い立ての黒髪
白い吐息、
淡いくちづけのように
霞む朝。

お気に入りの靴に
ポタポタと涙が落ちる。

曇る窓に
小指で描いたのは
傘を差した猫。

濡れたら、
雨に濡れたら消えちまうの。

口ずさむ歌に
冷たい頬に
寂しげな朝に
ポタポタと涙が落ちる。

雨の降る火曜日。

お願い!
私の小さな火を消せないで
・・・・・
ポタポタ・・・・・
チャプチャプ・・・ポタポタ・・・。





晩秋

脱いでいく姿
・・・・・。

こんなにも
風は冷たく、
あなたのこころは
渇いているのに、
どうして、
どうして、震えながら
微笑むのですか!

樹の枝より細い体、
トンボの羽より薄いシルエット。

うつむいている山茶花に別れを告げ、
一人静かに山の、雲の、谷間へと。

少しずつ
少しずつ
一つ一つ
脱いでいくあなた。

何も持たず
旅立つその先には
一体何があるのですか。

一晩、
あなたの体を
温めてあげてほしかったです

一晩、
この私のこころで
あなたを抱きしめたかったのです
・・・・・・・。

あなたのよい旅を願います。

私の絵葉書が
あなたの元へ届いたら
お返事を下さい。

いつまでも待っていますので・・・。

久しぶりの勉強

















平和でありますように。

人類の一人として私も世界の平和を望んではいるが
何を平和と言えるのか正直わからない。
単純に、戦争のない世界を平和だとは思わない。
誰が、何を、
平和に思うのかは個人の考えの自由ではあるが
おそらく私が思う平和は・・・
多分、これからも存在しない。
だから祈り、願い、望み続けているのかも知れない。

仕事の都合で私は今研修の為専門学校に通っている。
学校のすぐ隣に神社があり、
昼休みの時間は毎日神社へ行き
広い境内を無心に歩いている。

「世界人類が平和でありますように」

今日はじめて、神社の片隅に小さく書かれている
この言葉を目にした。

私は思った
人類の争いは人類が生み出したけど
人類を生み出したのは神様。(進化論を否定してはいないが)
だとしたら、神様は本当に無責任であるという事を・・・。

個人の権利が尊重され尊厳が奪われない社会、世界。
平和で平等な社会、世界。
まさに今、学校でこれらを勉強している最中であるが
現実ではかなり個人差がある

些細な自分の心の変化を楽しみながら
自分の為に誰かの為になるように
前向きな考えでこれからも勉強してやって行きたい。


小岩の月夜

あの、
丸い銀の塊を
撃ち落としたい。

東京、
無情な小岩の月夜・・・

懐かしい母国語を
ここでは聞きたくない。
出来れば読み書きも、
話も、したくない。

誇りのない愛国心溢れる、
可笑しげな焼肉屋。

焼かれているのは
牛でもなく、豚でもなく
奴隷のように扱われている
不法労働者の汗と涙。

隅々まで飛び散る
歪な言葉の銃弾。

男店主は
礼儀というものをしらない。
女店主は
恥じらいというものをしらない。

毎晩、
人を騙すため、人に騙されないため
月夜の下でまぬけな宴会を開いている。

狭い沼の中に潜み、
弱者の血を吸い上げ、
次から次へと
頬張り貪るように金を食べている。

それは、実に、哀れな姿。

あの、
丸い銀の塊を打ち落とした。

東京、
無情な小岩の月夜・・・

懐かしい母国語、
私の、
最初で最後に吐き出した汚い言葉。

「さらば、XXX達よ!くたばれ!!!・・・」

店主らの光る目をはねかえし、
小岩の月夜の下、
明日に向かって歩き出した。

今日は・・・

















色々と用事が重なり、
ほとんど行くことのない福住で
何時間も過ごした。
落ち着かない街の雰囲気、
夕暮れ、バスに乗り家に着いてから
しばらく休んだ。
今日は土曜日。
明日は、日曜日・・・早いね・・・毎日が・・・・・。
あれこれと、考えことをしていたら
くのいちからの伝言が届いた。
今私は斉藤和義のうたを聴いている。
2度目の、
何んともいえない不思議な気持ち。
この人のうたを聴いていると涙が出る。
悲しい気持ちになるのではなく、私のこころの声を
代弁して歌っているような気がして、ただありがたいのである。
忙しいくのいちの事も・・・ただありがたくて、いつも申し訳なくて・・・・・。

グレープフルーツの香りがするドラえもんのリップスティック!!
娘がうるおう唇をとがらせ、
お人形のレン君(リカちゃんの恋人)にチューする。

ドラえもんの笑顔、ドラえもんの優しさ。
人の笑顔、人の優しさ・・・・・

くらげのようにゆっくりとゆらゆら泳ぐ夜。
薄暗い部屋で一人静かにコーヒーを飲みながら
十一月一日、日曜日をむかえるのである。

中島公園













雨雲が東へと流れていく。
静かな中島公園・・・
私と銀杏を拾う老婆以外
近くには誰もいない。
私の目に映る風景、
風景の目に映る私。

お互い、ひとつにはなれないが
距離を保ちながら一緒にいる。

この景色を「綺麗だ!」何て言えない。
厳粛で清廉な佇まい・・・

しばらく私は、ベンチに横たわり目をつぶった。

小雨が、
瞼を、唇をくすぐる。
私はとても良い気持ちになった。

雨降る中島公園を後にし
逢いたい人に
逢えないまま、
しかし、笑顔で
私は南7条橋を渡った。

折り紙

半分折りました
また、半分折りました。
これから
どこを折れば良いのか
わかりません。

薄っぺらな紙一枚。

折り紙を
半分開きました。
また、半分開きました。
巻き戻しのように
元に戻りました。

しわくちゃな紙一枚。

小さくなるまで折り続けました
大きくなるまで開き続けました

心のようです
折り紙は・・・・・。

折り紙のようです
私の心は・・・・・。

ここに、色とりどりの
折り紙があります。

今は、
ただ、見つめていたいのです。

どんな願いも込めないで
どんな奇跡も信じないで
このままでいたいのです。

何にもなりたくない折り紙も、
あるのです。

七五三


















赤いもみじの葉
初雪の化粧。

着物の結び帯
可愛い七歳女の子。

鳥居くぐり氏神にお参り
心に冴え渡るお祓い鈴の音。

片手に千歳飴、どんな味?

ツバキ咲くツバメ島

ツバキ咲く
ツバキ島

ツバメ鳴く
ツバメ島

ツバキ摘む女の子は
春が嫌い。

綺麗なお花の首を
ちょん切っているのだから。

あなたの艶やかな髪
それは、ツバキの涙。

ツバメ悲しむ男の子は
幸福な王子が嫌い。

南へ渡る旅路の喜びを
足元で凍え死なせたのだから。

あなたの金色輝く宝石
それは、ツバメの涙。

ツバキ咲く春の島に
ツバメが飛んで来ました。

ツバメ鳴く南の島に
ツバキが流れて来ました。

女の子と男の子は
出会いました。
そして、結婚しました。

誰でもなく、ふたりだけの為に
幸せに暮らしています。

いつまでも・・・・・・・。


※「幸福な王子」はアイルランド出身オスカー・ワイルドの短編小説

すみません

話してちょうだい!
秋の西日が
幻のように
輝く理由を。

全ての物語を
あなたはご存知でしょう?

借りてきた念仏じゃなく
澄み切ったあなたの瞳で
おしえてください。

私なら
知っていること、
素直にお教えしますけど
残念ながら何も知りません。

季節の神様は毎日忙しいらしく、
私の声など聞いてくれないのです。

今、
どうしても
聞きたいのです。

運命を愛そうともがくとき、
なぜ、
あの美しい西日が
私を睨んでいるのかを・・・。

良い人を装いごまかしても
見すかされています。

きっと、
あれは、仏様の後光です。

美しすぎて怖いです。

雪が降り出したら
雪に隠れて、
「もういい~か~い?」と言ってくれませんか?
私が「ま~だだよ~!」と言うまで、
ゆっくり休んでください。

すみません。



三十年の間

おそらく私は今まで気づいていなかった。

私の間違いに・・・・・。

彼女に言われるまで、
自分の苦しみを三十年間折りたたんできたのだ。
広げて見せる程特別なことではないが、
彼女いわく、私への謎が解けたらしい。

三十年は長い。しかし、あっという間

この間、自分を苦しめているもう一人の私に逢えた。
正確に言うと彼女のお陰で逢うことが出来た。
見えない壁の向こう、隠し切れない後悔のため息。

彼女は私に言った。
「自分を責めないで!オンミのせいじゃないよ!」
この言葉、三十年間のあいだ、初めて聞いた。
彼女とは長い付き合いだが、今までこのような事について
一度も話しをしたことがない。
昔から責め続けている自分のことを・・・。

詩が死のように書かれ
死が詩のように泣いている私のこころはいつも暗く
いつも後悔の連続。
そう、何かを書き続ける理由のひとつ、
経験した全ての悲しみの原因が
自分のせいだっと思っていたのだ。

親不孝な娘・・・
親の死に、大切な人との別れを全部自分のせいにして、
攻め続けてきた。
それらを言葉にして書いているうちに少しは自分の罪が
報われているような錯覚をしていた。
私の為に「犠牲」になったと思い続けた年月・・・その気持ちが
今、突然なくなったわけではないが、
彼女の言葉で心が少しは楽になった。

彼女といるうちにいつの間にか
静かに朝が来て、二人は笑顔になった。

ありがとう! 

人、誰にも苦しみや悲しみがある。
何かのきっかけで重い心が軽くなるときもある。
以前にも言ったことがあるが、
私の場合何から何まで、必ず、友達から救われている。

私も友達から必要とされる人間になりたいが、
「頼りのなさ」の私。時々無気力をあじわうのである。

ひとりの時間


ゆっくり、静かにコーヒーを飲む一人だけの時間。
この時の身動き、自分の遅い動作が好きです。

妻でもなく、母でもない、私になる自由な時間

生活の時間に追われて時計を見なくてもいい。
好きなようにくつろげていい。

夜空を見上げ月を眺めたり、季節の星座を探したり・・・
本当に、なににも代えられない感謝の気持ちが自然にわきだしますね。

タバコと読みたい本をそばに置いて、おいしいコーヒーを飲む。
なんて幸せなひとときでしょう!

いつもはインスタントコーヒーを飲んでいましたが
ここ何日間ドリップ式のおいしいコーヒーをありがたく飲んでおります。
豆の香りがいいですね!
あの赤いコーヒーの実がこんなにもおいしい豆に生まれ変わるのですね。

日々、自然から動物から人からありとあらゆる
恵みをいただいております。
伝えきれない感謝の気持ち・・・
・・・今夜も、夜空に浮かばせそっと飛ばします。

さて、またコーヒーを淹れて飲むとしましょうか。



韓国の猫

















新美敬子の本「猫のアジア」の中から~
「滞在中に三十匹近くの猫を見かけたが、
つながれていないのは二匹だけだった。
つながれていなかった猫の一匹は、
チャガルチ市場(釜山)にいた猫で、玉葱とにんにく、
カボチャを売るテントの中にいた。
その猫は毎日、市場へ飼い主と共に通ってきているとのこと。
それだけ聞いても珍しいというか、韓国に限らず世界的に
見てもこういう猫はあまりいないから、これは特別なケースの猫だったと思う~。」


今はどうか分からないが、だいぶ前は韓国の猫は
大体紐につながれていた。
写真の猫(本の中)は、多分、自分の歯で紐を噛み切ったかもしれない。
紐、猫の顔、悲しい・・・。

昔、韓国にいるとき、我が家にも猫がいた。
しかし紐でつないでいなかった。
夜、こっそりぬけだし朝になると帰ってくる。
私が学校に行く頃顔を見せてくれる。
捕まったネズミとかミミズ、小鳥、セミ、木の枝を見せてくれる。
たくましい猫であった。

日本に来てから何かの縁で二匹の猫と暮らしたが
一度も外に出した事がない。
何回かケージの中に入れ川辺に連れていた事があるが
おびえてケージの中から一歩も動かなかった。
その姿が、とてもかわいそうに思えた。

先日、一軒家に引越しした夫の友人宅へ遊びにいたら
2匹のかわいい猫がいた。
三階建ての家で、隠れ場の多い広い空間。猫には最高の住まい。

猫と暮らしたい・・・・・
猫は飼い主を選べないが
・・・私も猫を選べない。
今後、何かの縁があればいいな。

昨日

昨日は、
あなたが
わたしを
教えてくれた日。
 
昨日は
わたしが
あなたの前で
新しく生まれた日。

昨日は
あたなと
わたしが
同じ涙を流した日。

昨日は
二人が
初めて
一人になった日。

愚かなわたしの
罪への意味、
あなたの答えで
なしとげました。
昨日に
刻まれました。

あなたとわたしの
昨日に・・・・・。


暗い井戸の中、
一筋の光・・・
・・・あなただったのですね。







川で洗濯

私は十七歳まで川で洗濯をしました。
盥に洗濯物を入れ仲良しの友達と夕暮れの川へ行き
肌着や靴下を大きな石の上にのせてごしごし洗いました。
村の人たちは遅くても昼までは洗濯物を洗い
家の庭先に干していましたが
友達と私はいつも夕暮れ。
洗濯物を夜、外に干したままにすると
魂を盗まれるぞ~と大人たちは言っていましたが
私達は少しも怖がりませんでした。

川に流された靴下と靴
川に流した悲しみ。

小学校六年生のとき、
仲良しの友達が
冬の川で溺れて死にました。
私の故郷の冬は
肌が切れる寒さです。
冬の川は厚い氷に覆われ、
村の人々の楽しみは
川の上に立ち、のこぎりで氷を大きく切断し
船遊びをすることでした。
浅い氷の上にいた友達が突然
氷の下へ消えました。
友達が見つかったのは
長い冬が終わり
蓮華の咲く春でした。

17歳まで川で洗濯をしながら
ずっと、ずっと、
友達の事を思いました。


最近、洗濯機が壊れて手で洗濯をしていた。
大変だったが心が豊かになるのはなぜ?!
家族の下着、タオル、靴下などを自分の手で一つ一つ洗っていたら
いつも間に微笑んでいる私がいる。
しかし、大変。足、腰、腕が痛い。
夫が洗濯機の故障をパソコンで調べたらしい。
しばらく、ドライバーで開けたり閉めたりと忙しそうに動いた。
ごみが詰まっていたらしい・・・洗濯機が・・・なおった・・・。
どうだ!!自慢げな顔・・・・・。

川で洗濯をしていたあの頃がとても懐かしい。
川で亡くなった友達・・・寒い冬になると、
もっと思い出す。

パラダイスガーデン

騙された

軋むドアを開けると
見るからに
そこはパラダイスじゃない。

土曜日の夕暮れ
駅前に漂う娼婦の甘い香り
そしてあふれる軍人達の笑い声

あの人たちは
夜を待っている。

表と裏をいい具合に演技できる夜

・・・・・・・・。


私は
果物屋の前で
ある男を待っていた。

彼は
ソウルに住む浪人
憧れのソウルの街の人。

二人で
果物屋の二階にある臭い階段を上った。

店の名前はパラダイスガーデン

何を想像してあの階段を上ったのか・・・

うつくしい物語の始まる予感は
いつも裏切られる。

そこは食堂
造花の赤いバラが邪魔臭いほど飾られている。

パラダイスガーデンがまさか食堂だったとは・・・
私は
辛いイカ焼きを食べた。
男は言った
「明日の朝一緒にソウルへ行こう!
今夜は・・・どこかで泊まろう!」

コップ一杯の水を飲み、
私は男に言った
「これから私、一人で行く!」

今思えば
パラダイスガーデンが
食堂で本当によかった。

憧れが失望に変わる
いい事だ・・・
失望こそ、強く生きていける心の支え。

私が、騙されたと言っているのは
自分の頭の中
パラダイスへのシナリオ
しかしまた騙されることもいい事だ
・・・目が覚める。

パラダイスは、生きている限り、この世には無いかも。

胸を張って、堂々と

「胸を張ってとか、堂々ととか
そんな事言いません。」
いつもの○○○でいてくれるのが良いと思います。

久々、くのいちからの伝言です。

まさしくその通りです。ありがとう!


最近、新しい仕事を始めたので
毎日追われています。
覚える仕事の事よりも、職場の人たちとの関係がなかなか難しいです。
嫌だと思えば嫌で、まぁ~仕様がないかと思えば仕様がない事ですが、
問題は、自分の心の中心ですね。
揺れる心、本当は他人が私の心を揺らしている訳じゃない
なのに、心の狭い私は他人の言動を悲しむ
そして余計な力を出して立ち向かうようとしている。
後から、自分が自分自身を激しく揺らしていることに気づく
・・・・・・・・・悲しいです。
私、未熟な人間です。

いつもの私でいればいい・・・
よく分からないけど、分かる・・・。

人生、色々と面倒な事も沢山あるが・・・・・大したことない
ありがたく、しっかりと生きていきたいですね。

時の流れ

















中島公園、散歩するすちゃんの目にとまったトンボ。
この景色(写真)を眺めると
故郷を思い出す。
秋に染まる故郷は
一日中薄暗い、寂しい風が吹いていた。
そして、いつもの川辺には、やつれて折れそうで死にそうで死なない薄が
しなやかにトンボと踊っていた。
記憶の中、昔の事なのに昨日の事のように鮮明に思い出す。
時の流れが回って回って回って、戻って来る。
流れて無くなるんじゃないみたい・・・・・。

風の色

私には見える
風の色が
今は秋
蜂蜜色の風

私には見える
風の色が
今は秋
茜色の風

私には見える
風の色が
今は秋
錆び色の風

眠る落ち葉の墓
積もっていく色彩
まもなく吹いてくる
藍色の風

今宵、
剣舞のように舞う
美しくも儚い残酷な風

目を閉じ飛び込み
混ざりあいたい

風そのものになり
私は見たい

何も見えないくせに
軽々しく風を歌う
私の色を。

区役所へ

そうか・・・私は日本人じゃないんだ
あたりまえのことを
忘れてた

私には私の番号があったんだ
慌てて思い出した

灰色の建物を見ると
めまいがおきる。
背広に眼鏡、難しい用語を
早口で言う男を見ると
頭が痛い。

そうか、札幌に来て
いつの間に
こんなに年月が過ぎていたんだ・・・・・

私は日本人妻で、
国籍は韓国。

区役所の若い職員が丁寧に
あれこれと説明をするけど、
よく分からないので、
よく分からないと言った。

寂しいもんだね、
住民票で証明する自分の存在。

シリアの難民は
何で自分を証明し
この先、何で存在への希望を抱くのだろう
私みたいな人間が
平和にくらしている間、
彼らは不慣れな国境の地面の上で泣いている。
それに比べると
私は何て贅沢なんだろう
寂しいもんだね・・・何て言えないよ。

区役所へ行く日は気が重い
しかし、
自分の手で選択できる小さくて大きな自由がある。
二つの国を持つ何んとも言えない幸せがある。
区役所へ行くと、
本来の自分の自分に逢える。
それが、ただの紙一枚、住民票であっても・・・・・。



地下鉄

こもる体臭をどこにも吐き出せず
細い電車は真面目に走っている。

暗い鏡の中を思わせる車窓
そこに映し出される私達の素顔。

上京した田舎者は
落ちつきのない視線の置き場を探しながら
気づかれないように周りを盗み見ている。
愛おしく思えるほどの無表情、無愛想・・・・・人、人。

冷たい蛍光灯
乗客達の弱々しい青白い姿
不思議な詰め合わせの箱の中、
見知らぬ人々一人ひとりが
まるで自分の姿のように見えてきた。

こんなにも身近で
他人同士の肌がこすれているのに
誰もが口を閉ざし、
薄っぺらな物体に夢中だ。

都会の昨日と今日、明日がごちゃついて
地下から地上からとめどなく話しかけている。

寂しいんだ・・・皆
皆、寂しいんだ。

寝ている人、痴漢する人
乗る人、降りる人・・・
あなた、わたし・・・・・。

地下鉄に身を揺らしながら
とうとう下車駅を通り過ぎ、終点駅まで行き着いた。
このまま、
地上に出たくないと、思った・・・・・。

二条市場路地裏

5回往復して、
6回目の往復。

驚かない、見慣れた姿だ
おっさんの
情け深い立ち小便・・・・・。
野良猫はかつお節をくわえ
背を低め走り去る。

ここは二条市場路地裏、
湿っぽいわだかまりを
捨てに来る場所。

生々しいカラオケの歌声
「恋唄綴り」
「津軽海峡冬景色」
「時の流れに身をまかせ」・・・・・。

真昼の酒場からもれる
数々の人生哀愁曲
偉人の名言より
最高に良くて、
最高にうっとうしい。

心の奥底にある何かが
するするとぬけだし
路地裏へしみこむ。

足を止め、
カメラのシャッターを切る
裕福な指の観光客。

ここは、
陽の当たらない陽が集まる
不可解な場所。
なににも収まらないカタルシスの世界・・・・・・。

ノイズ

お送りいたします
あなただけに・・・・・

わたしは黒い物体。

吸い込みたい、飲み込みたいです
白い波、あなたを・・・。

支配されていく喜びを
感じ取ってください
味わってください。

莫大な力の持ち主、
逆らえない崇拝者・・・。

電波にやられたなど、
騒音に洗脳されたなど、
招かざる客だなど
そんなこと言わずに
つまらないあなたの五感を
満開させるのです。

本当の
うつくしい世界を創り出したいのなら
うつくしいものを破壊するのです。

夜が明ける境目の今、
あなたは何を恐れているのですか?

選別したすべてを遮断するのです。
見失った明日の先をこれ以外の何で
補おうとしているのですか。

記号化される脆い魂を
愛という悪魔に乗っ取られる前に
脳みそが焼けようなわたしで
あなたの身を守りたいのです。

みたらし団子のようにくっつき
咲き乱れる男と女の深い欲望、
甘いメロディーに騙されてはいけません。
口ずさむ口を閉じるのです。

あなたは、良い子です。

わたしのせいにして
破壊しちゃいましょう!!

ねぇ、いいでしょう?
破壊しちゃいましょう!
潰しちゃいましょう!・・・
・・・・・・・・・・
ノイズ・・・このような狂気のノイズが
私の耳元から鳴り響いている。

ずっと押し寄せてくるのです。

スカイツリー

















友達から送られてきた写真。
旅先の浅草、かっぱ橋からのスカイツリー
いいですね。

私も、一人で旅がしたい・・・・・
日本の色々な土地を訪れ、神社やお寺を巡り歩きたい。

彼女のねこ

ねこが本を読んでいる姿は
人が本を読んでいる姿より真剣だ。
ねこが遠くをみつめている姿は
人が遠くをみつめている姿より哀愁だ
ねこが人を抱きしめている姿は
人がねこを抱きしめている姿より心強い。
ねこは常に本気で、
ねこは私達が思う以上の愛情を
私達へ注いでくれている。

彼女のねこは、彼女を愛している。






かっこいい人間

しみじみ思う
「しりあがり寿」、かっこいい人間だなって。
日本中、世界中にかっこいい男女は
腐るほどいるけれども
しりあがり寿さんは人間臭くて
かなりのかっこいい男。
一目会ってみたいと思うほど好きだ。

人と人間の違いなどわからないが、
確実に、違いは・・・ある。
臭いほど人間らしい
しりあがり寿からぷんぷんにおう。
この人間の内面からあふれるにおいを
勝手に私のハートはかっこいいと感じているよう。
こころがうれしくなる。

かっこつけたがる、
かっこよく見せたがるやつらは
いつまでたってもそのまま。
変わろうとしないし変わるのを恐れている。
なのに、自分以外の何かを変えさせようとしている。
うるさい、悲しい・・・・・。
私もその一人かもしれないが。

かっこいい人間のこころが羨ましい。
しりあがり寿万歳!!

雨の日、二人で散歩

土曜日の朝、
私より早く起きて本を読んでいる娘。
目をこすりながら娘の横顔を見ていたら
鼻水を垂らしている。咳もしている。
風邪をひいているのね。
そういえば、昨夜寝ているとき熱っぽかったな。
雨も降っているし、薬を飲ませ家でゆっくり過ごそうと思っていたのに
娘はなぜかお散歩に行きたいという。
凄い雨、二人で駄洒落合戦をしながら歩いていると
古本屋さんが目に入った。
興奮した娘は子どもの本のコーナーへ走る。
すぐさまお気に入りの本を見つけ読み始めようとしている。
鼻水は垂れているし立ち読みはよくないな。
一冊108円、七冊の本を買った。
外に出ると先よりひどい雨、それに重たい本、まともに傘も差さず
水たまりの道を避けながら歩いていたら娘が言う。
「雨の日のお散歩大好き!雨の日の本屋さんも大好き!」
そうなの?!よかったね・・・・・。

幼い頃、私は雨が降ると外へ出かけ一人でよく遊んだ。
空き地の水たまり場で、拾い集めた石を積み重ね木の枝を立てて
お花とか草を囲み湖のお城を作ったりしていた。
夜、家で眠るとき空き地のお城が気になって眠れなかった時もあった。
朝になり、忘れる時もあるけど、思い出して行ってみると
萎れた花と崩れかけているお城の姿が
子どもながらに儚くむなしくてちょっとだけ
心を痛みつけていたのを憶えている。
その気持ちは大人になった今でもずっと、雨の日になるとよみがえる。
なので、雨の日を喜べないし、娘みたいに「雨の日大好き!」だなんて
素直に言えない。

雨の日は苦味の強い濃いコーヒーで、
日々の溜まった汚れを飲み込もうとしているが
こびりついて取れないし、何より身体がだるくてしょうがない。
本当は、強い酒でも飲みたいが、飲めないので残念!

今日はまぁ、なかなか良い雨の日で、頭痛もなく過ごせて良かった。

思いやり

思いやりってなんだろう!

こんなにも素敵な言葉を

どんなふうに理解すればいいのだろう。

何処から生まれてくるのだろう!

頭の中から?

心の中から?

優しさの中から?

幸福をもたらす一滴の思いやり

塗り薬のように深く染み渡り、

何もかもを治してくれる不思議な力。


今まで私、知らなかった。

自分が

必要とするのは

全部自分の中にある事を。

使い切って、

いつかは空っぽにしたい。

反省と後悔を繰り返すほど

人生は長くない。

頑張れ!進め!って言えない。

静かに見守りたい

自分のこと、相手のことを。

この地上で役に立つのは

思いやりだけ。

かなり気を使う本気の思いやりだけ。

たぶん・・・・・・・・・。

秋刀魚を食べながら

友達からぬか漬けの秋刀魚を貰った。
以前にも貰った事があるが、
その時初めてぬか漬けの秋刀魚を食べて
美味しさにびっくりした。
優しい味、深みのある味、凄くありがたみが
伝わる味であった。
嫁いだ娘の事を思いながら、
沢山の秋刀魚をきれいに洗い
手で一つ一つ丁寧にぬか漬けするお母さんの姿。
彼女の、お母さんのぬくもりを私も感じた。

韓国人も秋刀魚はよく食べる。
私の故郷では魚などは香辛料で味付けし煮って食べるのがふつう。
もちろん、生魚を食べた事もないし
ぬか漬けなどない。
釜山へ移り住むようになって
街の屋台で生魚(刺身)を食べる釜山の人達を見た時は怖かった。
初めて見る信じられない風景、本当に驚いた。
今は日本で長く住んでいるけど、やはり刺身は食べられない。
しかし焼き魚は美味しい。
焼き魚などを食べるとき、箸で上手に骨を取り
苦味のあるところも残さずきれいに全部食べる夫。
それに比べると私の食べ方はかなり汚い。

秋刀魚を食べながら昔の幼なじみのことを思い出した。
「コンチ」と言うあだ名の友達。
秋刀魚は韓国語でコンチと言う。
なぜあだ名がコンチだったのかよく分からないが・・・
日本の有名人でも「さんまさん」っているな~。

北海道の短い秋、秋刀魚を食べながら感謝の気持ちで
お腹も心もいっぱいになった。
命あるものないもの、すきなものきらいなもの
無駄に残さず、きれいに食べるように心掛けよう。

見えるところに

カレンダーの日付に星印
家族、友達の笑顔の写真
満杯のインスタントコーヒー
娘のぬいぐるみ
夫のギター
ニルヴァーナの
アンプラグド・イン・ニューヨーク
捨てられない本
ゆっくりと成長している植物
亡き猫の骨壷
窓から見える高く広い空

見えるところに、
毎日、二十四時間あります。
生活の中にあふれています。

ありがたいことです。

気持ちが落ち込んでいるとき
見えるところにある宝物が
どうしてなのか
見えなかったりします。

身の回りに、
いつも傍にあるのに
なくしたかのように
探しているのは
何故でしょうか。

見えないところを、
無理してまで
見ようとする必要はありません。

見えるところにあります。
つくりのない正直な生活の中にあります。

真夜中の雨

好きですか?
真夜中の降る雨が。

あなたは、好きですか?
こんなこと聞く、
私のことが。

騒がしい土曜日の
気持ちを落ち着かせる雨です
大太鼓、小太鼓の鳴り響く
昼の祭りを忘れさせる
安らぎの雨です。

清らかな日本酒の香りを
飲み干しました。
雨のような
千の顔を持つ酒。

私の
渇いた情熱が
体のどこからほんの少し
揺れ動きました。

一人、静かな雨。

住所を無くした、
届かない手紙を
ちぎり捨てました。

何も手に入れたくないです。
何にも縛られたくないです。

灯りの下で
裸足の指を数えました。
まったく、くだらないことを
くだらないと思わない
心地のよい酔っ払いの
雨の真夜中です。

好きです。
大嫌いです・・・・・。

詩人へ。

今までの私の人生において、心の中は常に
秋の荒野を思わせる風景であった。

その風景とは、夕暮れの朱色、薄紅色、灰色、
焚き火のような赤い色々が混じりあい、生と死を包み、
寂幕たる彼方へ旅たつような、何んともいえない
憧れやむなしさを心臓へと運び、
弱者を脈打ちさせる、始まりと終わりの風景である。

寂しそうな秋風に揺れ動く私だけの燈は
荒野の中で消えそうで消えないまま、
子どものときから今までずっと火種を
持ち続いている。
人影のないその荒野には時々牡牛が現れ鳴いていたり
優しい眼差しで見つめていたりしていたので、
私はそれほど寂しくはなかった。

どうしてなのかわからないけど、
その牡牛は詩と結びつけられていて
牡牛=詩人という事になっていた。
韓国の詩人キム・ソウォル、ユン・ドンジュ、
ジョン・ホスン、リュ・シファ、キム・ジハ

この詩人たちは私の火種である。

そして、感謝すべきもう一人
寺山修司。

所詮、詩というのは、
心を表す言葉から生まれる思想の、感性の
個人の表現かも知れないが、
私は‘‘詩’’がなかったらとっくに死んだ。
大げさでもなく詩の一節、詩人の絞り出した血によって
私は愚かな希望を胸に抱き、今もこれからも
何とか生きていける。

あの、秋の荒野はあまりにも広すぎて、
どこまで続くのか、その先、何があるのかわからないが、
私は知りたくもない。

私の心臓が動く限り、私はあの風景の中で
彷徨いつつ模索しながら小さな自由を描き続けていたい。
それが叶わないことだとしても・・・・・・・。

寺山修司の「地平線のパロール」にこんな言葉が書かれてある。

「人は言語によってしか自由になることができない。
どんな桎梏からの解放も言語化されない限りは、
ただの‘‘解放感’’であるにとどまっているだろう」。

月は何を見ているのかな
72億人の中、
誰か一人の
祈りを
静かに耳を傾け
寄り添いみつめているのかな。

人々は何を見ているのかな
他人の不幸を喜び
欲望の塊を転がしながら
すり減る自分の靴底しか
見ていないのかな。

飽きることのない
月を、海を、山を、
空をみつめる私は
恥ずかしい。
自分だけが
苦しんでいると
うぬぼれ悩む
お粗末な自己愛・・・・・
とても、とても
恥ずかしい。

月は何を見ているのかな
亡くなる魂を寄せ合い
楽園の森への道を
照らしているのかな。
安らぎを求める弱い生き物達、
明日を期待する儚い夢
それらを悲しげに
みつめているのかな。

いや、違う・・・・・・・
月は、何も見ていない。

あれは、‘‘幻’’
何かを必要とする我らの幻

人々は何を見ているのかな
自分の事しか見ていない

幻だけをみつめている。

手のぬくもり

ぬらした手ぬぐいをそっとしぼり
熱する額にのせてくれた母の手。

秋風に舞う落ち葉のような
かさかさの指先
何度も、何度も
娘の頬を撫でる。

母の手は魔法の手
一番早く効く薬の手。

家出の初日、
夜の9時を知らせるサイレン
身軽く流れる川のせせらぎ
純粋な10代の冬だった。
真っ暗闇の小さな橋の上で
娘の帰りを待っている父。

寒かっただろう!
優しく抱きしめ何度も、何度も
背中をさする父の手。

40代半ば
このような私が、これからもどうにか
生きていけるのは
父と母の手のぬくもりを
忘れていないからなのである。

何より大切なのは
とても単純な動作、手をにぎる事。
言葉など・・・いらない。
何も・・・・・。
手をにぎるだけでいい。
手から伝わるこころ、そこに嘘はない。

その人の手を見れば
その人の事
わかると言うけれど、
その人の手に触れないと
その人のこと
わからない。

今私は無性に
手のぬくもりを求めているのかも。

男と女の恋心とか愛とは違うぬくもり、
心に伝わる手のぬくもり

私から伝えよう、大切な人へ。

たまねぎが・・

重い体を起こして
夕飯の支度をしようと
冷蔵庫を開いた。
豆腐一丁と卵、納豆
チーズ、たまねぎ、
にんじんと鶏肉。

これで何を作ればいいのかな
何も、作りたくないな
いや、何もしたくない。

でも、何か作らなきゃ・・・

まな板を出して包丁を握った
しかし、手が動かない。

白い・・・豆腐も卵も・・・白い
今日は特に白い。

病気といえない病気を患う
めんどくさい低気圧の押し寄せ。

あぁ、この体
何をどうすればいいのかわからない。

夫はギター弾きに夢中
娘は塗り絵に夢中
私は、この瞬間から
瞬間移動したい。

一瞬の催眠術
指を鳴らし
私を起こしたのは誰?

ボールの中、
溢れる水道水
たまねぎが
おきあがりこぼしのように
踊っている。

私は
にんじんを手にとって
パクパク噛みながら
たまねぎの皮をむきみじん切りした。

泣いてもいい
いくら泣いてもいい。

たまねぎを切っているのだから・・・・・。

夕食の時
家族3人、
いただきますのハーモニー。
ごちそうさまでしたの笑顔。

長いような
短いような
つらいような
ありがたいような
泣いたような
泣いてないような
諦めたような
諦めてないような
今日の一日。

明日はきれいに掃除でもしよう。
晴れますように・・・・・。

秋の声

約束とおり、
泣き崩れる鳥たちを
南の島へ飛ばした。

北国で好きになった女の子は
短い夏の間死んでしまった。

「あの鳥かごの中に
私の骨を入れて
海へ流して・・・」。

近づく事の出来ない
細い白目の水平線。

蝉の抜け殻は
蝉になって生まれ変わるのか、
それとも
永遠に死んでしまうのか。

うつくしさも、洒落も知らない
その上、生真面目な人間は
真夏の残酷さをよく知っている。

望みとはなんだ!
削除されない悲しみってなんだ!
夢の中で生と死をさまよう
黒髪の少女は誰だ!

小船に乗って、点になるまで
西へ西へ流れた。

最後の夏、
熱気塗れの儀式は終わった。

躓く小さな生き物
微熱に鎮痛剤
添い寝の母の腕枕
遠い記憶、錆びた時計の針
とろりと溶けて狂いだす。

季節の病気とともに・・・・・。

けして
振り向いちゃいけない昨日の夏

長い空の支配者は
明かりの神を恐れ
砂浜の貝殻を踏み潰した。
やっと手に入れた黒粉を
丘の上から
西日へふりかける。

夏の悲しみを忘れたいかのように・・・

泣き崩れる鳥たちを
南の島へ飛ばした。

その夜、
星空の欠片が
イカ釣り船のように
海の上に漂った。

そして、
北国で好きになった女の子は
誰にも内緒で
こっそりと
秋の声になって帰ってきた。

50円のほうれん草

失われたものを
かぞえてみた
失われた思いを
たどってみた。

いま、この私には
心の足し算が出来ない
引き算も出来ない。

最も
悲しいのは
愛が
わからなくなったこと。

愛には
数字も、表も、裏も、
過去、現在、未来も
当てはまる形も
不純な色目もない。

それらを知ったら
そう、
まったく、何もかも
わからなくなった。

今まで私は
無くす為、
捨てたものは
沢山ある。

得る為、
拾ったものも
そこそこある。

しかしながら
今になって
風に飛ばされた心の中、
何もない・・・残っていないのだ。

こんなむなしい人生が
明日、また明日も
続くのなら
残りの人生を
そのまま神にかえす。

不思議な世界だ
世界は不思議だ。

売れ残った50円の
萎びたほうれん草。

かわいそうだね!
私が
食べてやる・・・・・。

頬に流れるこの涙は
何の意味もない。

ほうれん草が美味しくて、
美味しいので
泣いているのかも・・・。

明日から私は
ポパイになるのだ!
いつでも、どこでも
愛する
オリーブを見守るポパイになるのだ。

絶対に、オリーブには
ならない。

少しずつ、ゆっくりと
心の中から
なまぬるい風が通り抜けていく。

50円のほうれん草から
かけがえのない力を
いただいたそんな夜の事でした。

歩いたら・・・。

一時間ほど歩き続けた

何処かへ行きたい訳でもなく
歩きたくて歩く訳でもない。

心の中、
自分が投げられた石が
いつの間に
隙間なく埋められて
重い息を
吐き出せず
苦しんでいた。

二時間ほど歩き続けた

何が私を歩かせているのだろう
足の小指が痛い。

心の中
自分を追い込むのは
誰でもない自分。
なのに、
なぜ誰かのせいにしているのだ?
惨めな弱さ
気を張る自業自得の寂しさ

・・・帰りたい、
楽しく歩いてた
故郷の町へ・・・。

ここは何処だ?!

立派な松が立ている。

神社の鳥居をくぐれないまま、
しばらく私は立ち尽くしていた。

お参り帰りのおばあさんと
年老いた犬。

素直な目をした
白い犬・・・
私を見つめながら
片足を上げ
松の木に
おしっこをしていた。

そして
おばあさんと犬は
ゆっくりゆっくり歩いて行く。
素敵な、うしろ姿。

私も帰らなきゃ・・・・・。

歩いたら、
歩いていたら
帰りたくなった。

何処なのか!
何処へ帰りたいのか
本当は、
分からない。

野菜

朝6時前、
夫は仕事を終え
千鳥足で帰ってきた。

手土産で、
野菜を持って
帰ってきた。

酒に酔い
瞼は垂れ
酒に酔い
床に寝転がった。

小さな声で
私を呼ぶ。

野菜だよ!
貰ったんだ
食べてね・・・・・。

窓に注ぐ
朝の柔らかい光。

じっと見ていたら
眩しくなった。

このような朝は
必ず、
突然雨を降らす。

夫は寝ながら
何かを呟く。

野菜・・・いいね、ねぇ?
食べて・・・・・。

ビニール袋の中、
茄子二つ
胡瓜三本
トマト二つ
ミニトマト十五個

夫は時々仕事帰りに
野菜を持ってくる。
その野菜達は
どれも面白い形をしている。
そしてどれもおいしい。

そして、そんな日の朝
なぜかいつも泣いている私がいる。

野菜・・・いいね、
食べましたよ!

運命

刺さって来い。

えぐって来い。


一生の寂しさを

歓迎する。

一生の孤独を

賛歌する。


喜ぶ悲しみが笑う。

悲しむ喜びが泣く。


深く、深く

刺さって来い。


縫いきれないほど

えぐって来い。


中途半端な女は

運命を

愛しているのか。

それとも、

他人の運命にしがみつき

のんきに徘徊しているのか。

・・・・・・・・

痛みのない運命を

求めるな!

今、ここにあるのは、

お前の運命。

愛さなきゃ、

何もはじまらない。

愛さなきゃ、

何も・・・刺さってこない。

小樽の海

あの、
海を、
見たかった。

あの、
色を、
見たかった。

この世で一番私を
惹きつけるのは
海。

この世で一番私を
悲しませるのも
海。

万華鏡の青い光
オルゴールの波の音色
坂の上の水天宮の神様

あるべきものが
ある場所で
静かに待っていた。

現実逃避する女は
海の街小樽で、
しばらく夢を見た。

その夢は
何度も見た事のある
未完成の無声映画。

聞こえて来るのは何もない。

しかしなぜか
聞こえた。
あの、
海の声が。

また、いつでも
ここに
いらっしゃい・・・・・・。

小樽から帰ってきて何日も過ぎているのに
いまだに夢を見ているよう。
生活に馴染めない。
ぼっとしている・・・
夜風に秋を感じているせいなのか、何なのか、
とにかく心身がだるい。重い。

あの海がずっと頭から離れられない。
怖いほど・・・・・。

それでいいの?

悩み事、相談を心広く聞き入れる耳(心)が
私は乏しいので申し訳ない時がある。

世の中には、想像出来ないほど
ありとあらゆる事が起きていて、
どうにもならない面倒な事が
身の回りを付きまとう時がある。
いちいちそんな事気にしないで、
かかわらないで済む問題なら
かかわらないで済ませたいが
そう簡単には行かない。

世の中、社会の網は見事に
複雑に繋がっている。

足をもがけばもがくほど絡まったり
安全に守ってくれたり
実に良くも悪くも上手く出来ていて
中には、人々を結ぶ大事な網を破るのが得意な
人たちがいるのも事実。

私にも友たちにも子どもにも夫にも
悩みがあり、
時々誰かに相談したり、我慢したり
時々苦しんだり、悩んだり、悲しんだり・・・
気づかないふりをしているけど心の中は
24時間大変な思いをしている。

しかし、本当にわかってほしいのは
気づいてほしいのは
自分が自分に、相手にしている「間違い」
何らかの思い込みの間違いから
後戻りの出来ない傷をつけてしまうと、
人生、もったいない・・・寂しい・・・。

何が正しいのかはわからなくても
何かが自分の中で間違っているのかは、
きっときっとわかるような気がする。
何故なら、前に、悲しむ苦しむ相手が
いるのだから・・・・・。

こんな事してたら、相手を傷つける事になる・・・でも
いいじゃない。嫌いなんだから・・・・・。
自分の気持ちの方が大事!
相手の事、どうでもいい。

それでいいの?
それで、あなたはいいの?

今日もまた、
私は色々考えた。

なるべく出来ることなら、やさしい人間になりたい。
自分に、相手に、間違い人間に・・・無理なことかもしれないが
それで、いいの?をいつまでも、まず、自分自身に言える
ようになりたい。

「これでいいのだ」天才バカボンのパパの口癖。

いつか、私も言えるようになれたらいいけど、多分言えないな。

鳴き声

子どもの頃、
家の庭先で、裏山で
川辺で、ずっと鳥が鳴いていた。

朝から晩まで。


今じゃ、カラスの鳴き声しか聴こえない。

昔はすぐそこに木があり、足の下は
土だった。
「自然」は身の周りに、生活の中に自然にあふれていた。
生まれてから自然の中で暮らしていたので、
今思えば、何が自然だったのかもよくわからない。

田舎と都会みたいなものなのかな?・・・。
自然はどこにある?

時間があれば山に行く友達は鳥や木、
お花やリス、数々の山の生き物達に挨拶しながら
穏やかな、険しい山々を登っている。
どんな思いをしながら山の中を歩き登っているのかは
知らないが、何にもかえられない何かがきっとあるはず。

日本に来てから一度も見掛けていない鳥がいる。
「カササギ」、韓国語では「カッチ」。
韓国の国鳥でもあるカッチはとても鳴き声がきれい。
良いお知らせを運んでくれるカッチの鳴き声・・・恋しいな!。

今日も暑いが、お外にでも出かけて沢山歩こう。
何か、楽しい発見があるかも・・・・・。

鳥達の鳴き声でも聴けたらもっといいな。

新聞配達員

青年はいつも笑顔で
口笛を吹いていた。

慌てる様子もなく
こつこつと新聞を
配達していた。

何年間の間、
何度も彼を見かけた。

上下紺色のジャージー
日本ハムファイターズ
ロゴ入りの帽子

なぜ、
私は青年の事を覚えているのだろう。

4~5歳児のような
下手な挨拶・・・・・

彼の「こんにちは!」の声が
忘れられないからだ。

断絶された社会の片隅、
最後に残されたメッセンジャー
私には彼がそのように見えた。
なぜ・・・
なぜだか、そう思えた。

ある日、
散歩の帰り道

近くの公園で彼を見かけた。

二匹の犬を抱いて独り言を言いながら
くるくる歩き回っている青年。

幼い私の娘が
彼に近づき、
犬と彼を見つめる。

犬と彼は
娘と私を見つめる。

「こんにちは!」

彼は初めて会ったかのように
嬉しそうに挨拶をする。

私も、「こんにちは!」・・・・。

家に遊びに来ない?
彼からの不思議なやさしい言葉。

・・・・・・

私はその場しのぎに言った。

今度ね・・・。

青年は私以外の
誰かにも同じ事を
何度も言ったに違いない。

誰も遊びに来てくれない事も
知っていたはずだ。

だから、
青年は
新聞を配っていたのだ。

人へ、家の中にいる人へ・・・・・

印刷されていない彼の思い。

多分、
勝手に私はそう思ったのであった。

無言













窓の外の庭にはお花が咲いていて、
窓の中には冷気が漂う。
男(夫)と女(妻)の間、埋められない溝を
感じる。
黒い鉄柵、黒いドレス
青い壁、青いパジャマ
無表情の二人・・・。

この絵は、好きな画家マティスの「会話」です。

これから先、誰が、何を話そうとしているのでしょうか。
会話と言うより、重い沈黙、
「終」を感じます。
二人の距離は近いが、
二人の心はお互いに閉ざされて遠い。
二人の冷静な見つめあい・・・最後の、
長いような短いような、
時間が止まったかのような
特別な空気の流れを感じさせます。

この後、絵の続きの物語はどうなったのか・・・。

夫婦の会話

私はいつも夫に対して思うことがあります。
思わず自分の弱音を漏らしたとき、
生活の中、些細な相談の事を言うとき、
大体夫の表情は固まります。
無言のまま。何故か・・・(笑)
表情と言うのは
言葉よりものを言いますね。
正直、非常に悲しい気持ちにはなりますが、
今更そんな夫の態度に不満はありません。

確かに嬉しい気持ちになれる話ではないので
夫の反応は正しいかも知れません。が
聞きたかったのです。
夫の理解のある意見を・・・期待しすぎですかね。

ただ、自分の気持ちを少しでも
理解して欲しかっただけなんだけど、
夫はどうもそんな話が苦手らしいです。
つまり、私が求める意見(話)を
夫は最初から特に知っていて
求められる事をあえて言いたくないらしいです。
俺に、何を言わせたいの?みたいな・・・・・。

えっ?そうじゃないのに・・・
そう感じたなら何も言えないな。

毎回の事、
しょうがないと諦めつつあります。

思えば、
夫と出会ってから会話らしい会話をした覚えが
ほとんどありません。
音楽の話以外に・・・・・。

最初、日本語を話せなかった私は気持ちを
伝えられないもどかしさでちょっと苦しかったのですが
夫にはそんな様子が全く見えませんでした。
その時からずっと、
今も、夫はそのままです。

くだらない話も、大事な話も、
良い話も、悪い話も、
夫婦には必要かも知れません。

相手を尊重する気持ちさえあれば
口論も口論で終わり、
嫌な我慢より良い我慢をするように
なる気がします。

言葉のない会話はいくらでもありますが、
沈黙と無言を都合良く使って欲しくないのが
私の本音です。

正午12時

正午12時、
部屋が歪み
時計は止まる。

人間だけが
汗を掻いていると
思ったら
そうじゃなかった。

干されている
洗濯物を見ていたら
何故か
悲しくなった。

何をしようか・・・

花に水やり
トマトの収穫
蜘蛛の巣の観察
リンパ腺のマッサージ
・・・。

正午の暇人は
トイレに閉じこもり
エロスの世界像を読んだ。

サドも
バタイユも
プラトンもサルトルもごもっとも。

何が?・・・
さぁね・・・・・・。

「ママ!オセロやりたい!!」

白いチップ
黒いチップ、
君達も何だか悲しいね

暑い正午、
娘と私は
オセロをやっている。

お互い、
ルールも知らないまま。

でも、いいね。
こんな訳のわからない暑い日の
可笑しげな時間が・・・・・。




あせも(?)

かゆい
かゆい
我慢出来ず
掻いたら血が出た。

首のまわりに
あせもが出来たのは
3年前からの事・・・。

年中汗をかく仕事に就いてから、
夏に限らず
首の周りがかゆくなった。

赤く爛れた首を
人に見られるのは
実に恥ずかしい。

塗っても塗っても
薬は効かないし
しつこいかゆみは
おさまらない。

明日からまた
じめじめと、蒸し暑い天気になるらしい。

憂うつな気持ち・・・・・。

ひりひりと皮膚が痛む。
それでも掻いてしまう
血が出ようが
後のことは考えず、
とりあえず、掻く。

その時の気持ち良さ・・・
その後のひりひり・・・
その繰り返し。

あぁ、かゆみは本当に厄介で不快なものだ。

全部の心

誰も
自分の心の顔を知らない。
知るはずがない。

わたしの全部の心があなたで
あなたの全部の心がわたし。

心の全部は謎で
謎の全部が
この世を支配する。

仮面を持たない
精神病棟の人間
仮面を持ち続ける
健全社会の人間。

良い仮面
醜い仮面

どれを選択する?
どれが本当で
どれが嘘?

それぞれの仮面をかぶる
それぞれの仮面をはずす
残るのは、
やはり、仮面・・・・・・・。


映画「インサイド・ヘッド」を観た。
主人公の心の中にある
五つの感情たちがどれもいとおしい。

実際の事、感情の数を
人は、数えられるのかしら。
おそらく私には
私の知らない感情(気持ち)たちがいっぱいいそうな気がする。
それらは全部仮面に覆われて、いつ、どの場面で
現れるのかわからない。
今、持ている感情(仮面)だけでも大変なのに、
未知の新たな仮面を渡されたら・・・・・

子どもにも
大人にもその人の仮面があると思う。
上手に使いこなすか
下手に使いこなすか、
自分も、誰にもわからない。

何が、ありのままなのかもわからない。
ただ、正直にいられるのは不可能な事。

全部の心の顔
全部の心の声

全部を愛すしかない。

全部の心は仮面で出来ている。
しかし、
色眼鏡を外せば必ず見えてくる。
それが良い仮面なのか、醜い仮面なのか・・・
・・・・・どっちも、同じ。






いつか・・・

















町田康の本、「猫とあほんだら」からの写真です。

捨て猫
野良猫
拾い猫・・・
悲惨に虐待されなくなる猫たち。

世の中は不平等です。

それが世の中だ!と言うのなら
そこまでです。

何が大事なんでしょうか!

追い越す必要も
取り残される心配も
私にはありません。

ただ、恐れているのは
見て見ぬふりをすること。

不条理な世間で
損するのは、立ち向かうのは
いつも
見て見ぬふりが出来ない人たちですかね。

我々が捨てる様々な命は
何処へ消えていくのでしょうか。

黙々と、
小さな命をわが子のように
見守る沢山の方々に敬愛を現します。

いつか
出会えるかもしれない、
いや、特に出会ったかもしれないのに
触れないように見過ごしているかも・・・。

いつか
見て見ぬふりしない、出来ない、
そんな人間になりたいですね。

黒猫~白い主














古代エジプトの壁画が
銀の扉に描かれていた。

秘密のおまじないを唱える・・・。

謎の空間が現れ、
不思議な瞬間移動が始まった。

満月の引力により
招かれた九階の門には、
漢字の表札が掛けられていた。

疲れた素足を
湧き水の中にそっと入れてみた。

あ!安らぐ・・・これ以上何を望む?!

丁寧にお出迎えしてくれたのは
静かな足取りの黒猫、
そして、白い主。

猫だ・・・黒猫だ。

ここには、
黒猫が住んでいる。

声のない使者の呼び寄せを
心で読み取る時がある。
それは、滅多にない事だ。

弱くて、濁った魂を
洗わせてくれてありがとう!

やはり、
猫は神のお使いだ。

やはり、
私は、いつまでも
猫に救われているのだ。

素敵な時間を
ありがとうございます。

秘密のおまじないを
教えてくれた白い主よ、
君に幸あれ!!!

Be Bop A Lula、寂しい夜でも

ビー・バップ・ア・ルーラ
泣きだしそうな
夜のロックンロール。

小銭を数える仕草は
やめてちょうだい。
缶コーヒーの中、
吸殻の劇薬呑むのも
やめときなよ。

突っ張るなら、
とことん突っ張ってちょうだい。

じめじめした真夏が
ぶっ飛んでいくくらい。

しがない女には見る目が
あるのかしら?
ないのかしら?

散々泣かせてもらったわ。
煤だらけの煙突の中で。

お気に入りの髪飾りを
置き忘れて来るんじゃなかった。

女を飲み食いするのなら
利子付きの代金を払いなさい。

いい歳した男なら
十代のクソガキの
真似はおやめ。

適当な脂肪を揺らして
裸のままで突撃してちょうだい。

ルーツのある本性なら
獲物を誘き寄せる必要はないわ。

しかし、
ロックンロールを舐めると
右折ばっかりの渦巻き人生よ!

まぁ、恐ろしい・・・・。

しっかり刻んで
どっしりと構えて
たっぷり浸かるのよ。

あなたは、
ビー・バップ・ア・ルーラなんだから・・・。
ビー・バップ・ア・ルーラ。

挫けそうな私は
ビー・バップ・ア・ルーラ
寂しい夜。

偉そうに言っているけど
実は私、
口がきけない女なの。

まぁ、恐ろしい女よね・・・・・。

灰色の午後

裏側に隠した、
貧弱なこころの塊。

抵抗している。

「外に出たい!出しなさい!」

出来れば、手を伸ばして
引っ張り出してあげたい。

しかし、暗いんだよ!
あんたらは・・・。

灰色
灰色
あの世の
この世の
灰色。

灰色は地味で、
じわじわと痛む。

落ち着きが、
忍耐心が必要だ。

程よい苦味のある
コーヒーの香りを
吸いまくるしかない。

次は、深呼吸!

邪魔するもの。
午後の分厚い雲が
体中を色染めしようとしている。

鈍る神経は
こんなむなしい、
灰色の午後を
最も恐れているのだ。

鼻から唇を伝って
生臭い血が流れた。

あぁ!
生きている・・・・・。

灰色に負けない
真っ赤な血が、
コーヒーの中へ沈んだ。

喜びが湧いてきた。

さぁ、出ておいで!
抵抗しなくていいよ!
灰色の午後に出ておいで。

しばらく、
なるべく やさしく、
見守ってあげるよ。

話(会話)

「何んと言えばいいのかな・・・」
これは、私が知っている私の口癖。

話し相手の少ない私、
話す相手は限られている。
人と上手く会話が出来ないので
決められた場所での
何らかの繋がりのある集まり、
大勢の人と同じ時間を過ごさなきゃいけない所に
いる時、非常に苦しい。

社会性が足りないせいなのか、
人が苦手なのか・・・
おそらく、一番の原因は
会話にある。

学校での集団生活、団体行動は
息が詰まるほど嫌で、よく休んだ。
しかし、大人の社会では
そんな事通用しない。
なので、
なるべく私は少しでも自分を励ます為に、保つ為に、
無理して微笑んでいる。
作り笑顔・・・だが、少しは力になってくれる。
ほとんど話さなくても、
何とかその場での苦痛の時間を耐えようと自分なりに
努力はしているが、やはり無理がある。

人の前、職場、社会の中・・・・・
・・・だから、結局 酷く疲れてしまう。

話すのは嫌いじゃないが
言葉を口から、相手に伝えるのがとても苦しい。
言葉以外の言葉、
言葉じゃない何かが欲しい。

手紙を書くのも、
電話を掛けないのも
あまり、人と会わないのも
思わず、誤解を招くのも
相手を傷つけるのも
すべて私の言葉、もどかしい話のせい。

こんな私の話を
それでも耳を傾けて聞いてくれる
家族や友達。ありがたい。

偶に、
あきらかに嫌な態度を表す人に会ってしまう時がある。
私が失礼な事をしたかもしれないが、
その人の言葉が、視線が私を悲しくさせる。
思い出したくないが、思い出す。
そんな時はいつも
本を広げる。
読むというより、目に留まる言葉を見つけ
心からの話を交わす。
どうして、どうしてこんなふうに
人と話が出来ないのかな。

話、会話は苦手なんだけど、
結局、話で元気になれる。

何んと言えばいいのかな~
何か、まとまらない話を
深刻に書いている気がしてきた。
こりゃ、駄目だね!

夜中の3時か。
いい夢でも見よう・・・・・。

尻尾

下には下が、
その下を
掘り下げていくと
上がある。

上には上が、
その上を
上り詰めると
下がある。

下にも
上にも
どちらにも
属さない。

左へ
右へ
蟹歩きしない。

世界が丸い限り
ぐるぐる回る限り、

一生を懸けて
自分の尻尾を
追いかけていたい。

一度も
見たことのない
自分の尻尾。

今まで私、
何をして
何を探して
何になろうとしたのやら・・・。

つかめない尻尾を
見つけ出し、
回って、回って
回り続ける阿呆になりたい。

植える人へ。

慣れない手つきで土を触る。
柔らかい
温かい
懐かしい
あぁ・・・
これらは何かと似ている!

命が消えて
土に帰ったら
何が残る?
私が死んで
土になったら
何を生やす?

花を植えても
木を植えても
沈まない悲しみ。

あぁ・・・
これらは何かと同じだ。

何処にも、売られていない
持って生まれたものを植えたい。

土塗れになった
汚れじゃない汚れを
洗い流した。

愛を植えた広い畑、
何も見えない。

見えないままで・・・良い。

実る期待も、利息も
理想も、価値もない、
見晴らしの良い畑。

植える人へ。

生きている限り、
いつまでも、
植え続けてください!
適当な愛は
すぐ、枯れますよ。

今、家にいる?

暑い、暑い日だ。

どうしても

花を植えたい。

名前の知らない花を植えた。

少しだけ、

こころが満たされた。

しかし

何かが違う。

何かが・・・・・。

子どもは嬉しそうに

花を見て

笑っているのに

私の顔は石のように硬い。

濁った色んな醜い模様が

狭い意識の中から

情けない主張ばかり言っている。

自分が誰なのか

いっそ忘れたい・・・。

そんな時だった。

「今、家にいる?」

参った・・・。

どうして、

いつも友達から

助けられてばかりいるんだろう!

涼しげな風を運んで来てくれてありがとう!

静かな夜、

花を見て、

やっと笑える私が 今 ここにいる。

音符を拾う女

途切れるメロディーが
五線譜の上から舞う夜。

女は
男が落とした音符を
拾い集めていた。

夜の端っこを借りて
一文無しで始めた路上商売
男の帽子の中は 空っぽ。

投げ銭に夢を売っている訳じゃないよね。
そこから、
切り放せない強い綱を張り
どうにもならない夢へ
結ひつないでいるんだよね。

指先に絡まる悲哀
六弦の相棒の奴、
いったい、その男に
何を鳴らさせようとしているんだ?

世界中を歩き回る一人ちんどん屋
それが 男の夢。

お尻に出来た たこをつねったら
路上の夜風が笑った。

お前さん、
一曲聴かせておくれ!

ねちっこい Bフラットの音符が
乾いたアスファルトを湿らせた。

今宵の最後の歌を
一生歌い貫くのは幸せなこと。

奥ゆかしい夜。
どこからか
馴染みのあるメロディーが聴こえてきた。

女は、こっそりと
音符一つ拾い胸の中にしまっておいた。

それは相手のいない
モノローグのような
切ない音符であった。




デモ行進

札幌でも
安全保障関連法案に反対する市民らのデモ行進が
行われたらしい。

日本中で戦争法案の廃案を求める声が多い中
デモする人々を冷たい目線で見る人たちもかなりいるはず。

法案に賛成するのも、反対するのも
法治国家ならではの国民の意思表示。

このあいだ、夫とニュースを見ながら話をしていたら
夫は反対を示した。
何があろうが、日本がどんな事をされようが反対!
単純に、やられたのでやり返す事自体を否定していた。
もし、戦争で家族が犠牲になっても?と 聞いたら
少しは悩んだが、やはり答えは 戦争法案反対!!

私は今のところどちらとも言えないが
戦争が起きたとしても、
夫を 国の為に、家族を守らせる為に戦場には送りたくない。
こんな事を考えている今もなお世界のどこかでは
銃声が鳴り響いているだろう。

戦争ほど悲しい現実はない。

政治に関心がなくても
戦争法案の詳しいことを知らなくても、
戦争反対のデモ行進に加わり声を上げる事は大事だと思う。
中には 
便乗して遊び感覚で行進している人もいるかもしれないが、
何も行動せず 批判ばっかり言っている半知識人よりはマシだ。


棗の木

無色のひかりが降り注ぐ

正午の庭。

熱る体を

どこにも隠せず

棗の木は、立ち尽くしていた。

何かが可笑しい・・・

私は 試されている。

見る目のない何者かに・・・。


鶏もヤギもウサギまでが

小屋の中でのんきに昼寝。

こんなにも 静かで、

少しの嘘もない平穏な日

息苦しい・・・嫌いだ。

我慢できないほど 嫌いだ。

古家の縁側、

くつぬぎ石に置かれた履物を拾い

思いっきり庭先へ投げた。

そうすると、棗が

棗が、ぽんぽんと落ちて来た。

私は 

裸足のまま棗を拾い口の中に入れた。

甘くて おいしい棗・・・。


いつの間にか

鶏もヤギもウサギも起きていて、

庭に集まったひかり達が

安心したかのようにゆっくりと消えて行った。


記憶に残る悲しみの中には

私を励ましてくれた数々の存在がある。

当たり前なのに、

棗の木からは

実れる事実を教えてもらった。








ハマナス(ヘダンファ)

重い瞼の上に蜘蛛の巣
夏の仕掛けです。

このままだと
琵琶法師の家来に
なりかねません。

目を覚ました怖い夜
忘れちゃ行けない思い出が
線香花火のように燃えて
消え去ろうとしていました。

煙のように
主のない言葉が彷徨い

壁にぶつかる弱い波動は
主のない自尊心を傷つけ
心を奪おうとしています。

何の取り柄もない私です。
だからと言って、
視線を逸らし
空咳で追い払わないで下さい。

雨降る砂浜へ
連れて行ってくれませんか?

ハマナスが恋しいです。

赤い糸を紡ぎ、
小指に優しくまいて
亡魂になる前、
もう一度
マウニの涙を歌いたいのです。

日本海の遥か彼方は
何処の国?・・・・・・・。

懐かしい声が
聞こえそうな気がします。

私は、ここにいます。

忘れ去られた夏の思い出、
知らない浜辺に咲いているのでしょうか!

ハマナスが恋しいです。

マウニの歌が
恋しいです。


※ハマナスは韓国語で「ヘダンファ」と言います。

何も拒まない

何も量らない

何も比べない

変わりつつ 変わりのない

あの空。


幼い雲 手足を伸ばし

自由に泳いで行く。

白い鳥 黒い鳥 羽ばたいて

鳴き飛んで行く。

大きな飛行機は人間を積み

地上へ運んで行く。


空が続く限り、

ある限り行く、行く・・・

・・・行く、行く・・・どこまでも。 

戻っては、また行く いつまでも。

何だか悲しいね、

空はとこにも行けない。


何も拒まない

何も量らない

何も比べない

染まりつつ 染まらない

あの空。


見えない事 知らない事

最初から最後まで

あの空に書かれていた。

翼がなくてもいい。

自分の体で感じれば良い。

何だかありがたいね、

空はいつも後から教えてくれる。


ちょっと、眺めてください。

あの空が見えますか!

こぼれるあなたの微笑が

いま、

空から私のもとへ届いております。

ありがとう、ありがとう・・・・・。



七夕

あの星
この星
掻き集め
恋しい貴方を
訪ねて行きます。

天の川
一人船の川
漕いで行く彼方
恋しい貴方に
逢えますでしょうか。

黒髪簪挿し直し
一夜限りの
宴に参ります。

玲瓏とした笛声で
私を貴方の元へ
導かせて下さいませ。

あの星
この星
天の川
目映い恋散る
七夕儚し。



永登浦(ヨンドゥンポ)駅

下手な化粧をしたものの
涙で滲むのはマスカラなの?
それとも、列車の時刻表?!

 安っぽい黒い鞄には
何が入っているのかな?

下着と古い写真と親戚の住所のメモ
まぁ、お金になるものは何一つないね。

世の中を知らず、
教養も美貌にも恵まれず
大都会で生き抜くのは
君には自殺行為。

君は、田舎ネズミなんだから・・・。

大人ぶる君だが
真っ赤な口紅が・・・とても似合わない。

不自然な歩き方をしていると
見間違われるよ!

客引きの娼婦だと思われるからね。

警察に職務質問される前に
永登浦駅から離れるべきよ。

公衆電話を探しているけど
何処の、誰に掛けるんだい?

わかっている。
誰一人いないってことを。

さぁ、持っている全てのお金を出して
行けるどこまでの切符を手にして。

これで、お別れするの。

何処でもいいから、
何処でもいいからね。

夢とか希望とか、勇気だとか、
そんなものなどいらない。
自立するとか、そんなもんじゃないよね。
身一つ残して、
全部捨てましょう!

きっと、強くなれるよ。
離れて、離れて
また離れて、強くなっていくの。

さぁ、乗り遅れるなよ!
聞こえてるの?

深夜の駅から開演のベルが鳴り響いているよ。

更なる旅の劇はここから、
これからなんだからね。



※永登浦駅はソウルの永登浦洞にある駅です。
その後、遠回りして辿り着いたのは故郷でした。





そうだね!

職業安定所(ハローワーク)へ行き担当者と
仕事の相談をした。
以前の仕事を辞めてから、あっという間に半年が過ぎた。
ハローワークへ行くときの重い心境・・・少なからず
後ろめたさがあるので、心も足も重い。
相変わらず職業相談の担当者は毎回同じ質問をし、
相変わらず私は同じ答えをする。
求職活動の印を押してもらい、次回の認定日を確認し
申し訳なさそうに急いで出って来た。
早く仕事を見つけなきゃと思いつつ、本当にそう思っているの?
と思う自分がいるのも事実。

あぁ~。

帰り道、これからの事を考えた。
やる気はあるのかと、なくってもやらないとね!
自分自身に言い聞かせながら歩いていたら
なんと、道に迷ったのである。
豊平区と白石区、どっちなのか・・・月寒だから豊平区なんだけど、
全く知らない初めての町。

うれしくなってきた。
先までかなり落ち込んでいたのに、わくわくしてきて口笛まで吹いて・・・。
道に迷うと、何でうれしくなるのかな!

そうだね!

この先の事、
迷い道じゃないけど、くよくよしないで歩いていこう!
あまり自分を責めないで普通に少しずつ頑張ろう!
贅沢にのんびりと仕事を選ぶ余裕はないけど
今の、何とも言えない余裕を大事にしよう。

そして、
また始めよう。


胸の中に狼一匹、誰にも内緒だよ。

遠吠えを漏らしちゃ駄目

涎を垂らしても駄目

恐ろしい真実、

あの火の玉を見つめちゃ・・・

・・・駄目だからね。


暗闇が続くしばらくの間、踊りましょう。

「月光ソナタ」をかけましょうか!

時には、

原始の痛みを忘れ、心を乱す鬼を

騙す必要があるの。

だから、気が晴れるまで

胸の中で牙を鳴らし、

強がらない強さを手に入れましょう!


花の冠を大切にとって置く程、

私は純情な娘じゃない


お願い!草原を懐かしまないで。

どうか、この、私の胸の中で生きて!

似たもの同士の孤独を合わせ

磨り減るまで噛み付き、

月光の下で抱きしめましょう。


一本ずつ、

私の肋骨を砕いてちょうだい。

研ぎ澄まされた鋭いその牙で。


胸の中に狼一匹、誰にも内緒だよ。


皿を洗う男

冷たい水で洗い流す孤独。

冷たい手に絡まる後を引く無念。

洗うのさ、忘れるのさ・・・

皿を、汚れを、取れない悲しみを。

愛した女の口癖は ‘‘いつか”

いつか、うまくいくわよ!
いつか・・・しあわせになれるわよ!

ごめんよ!
こんなはずじゃなかったのに・・・。
割っちまった人生に
お前の苦労が染み付いていつまでも
取れないんだ。
ごめんよ!
幸せにしてあげられなくて。

冷たい水で洗い流す儚い泡。

冷たい手に落ちる温い涙。

流すのさ、かわいそうなやつ・・・

皿を、貧しさを、残る悔しさを。

愛した女の口癖に

うんざりした時もあった。

見てろよ!
うまくやっていくからな・・・。
お前の嫁入り道具を磨いていると
苦しみが何とか取れそうな
そんな気がするんだ。
見てろよ!
守るからな・・・・・・。

父は母の死後、一所懸命に皿を洗っていた。
そんな父の後ろ姿を忘れられない。
冬の井戸水は肌が切れるほど冷たく、
父は白い息を吐きながら皿を洗い、
桐の棚の上にそっと置いていた。
私が皿洗いをしようとすると、
父はいつも大丈夫だからと言ってた。
母を思う父の皿洗い。

皿を洗う男は私のお父さんだ。
お父さんは私に余るほどの愛情を注いでくれた。
時が経つにつれ親のことを深く思う。
「ありがとう」の言葉しか思い浮かばない。
そして、親が生きているとき伝えなかった「ありがとう」。
私は、皿を洗いながら
何度も何度も呟いている。






鉛筆

鉛筆を持たない生活は考えられない。
今までの人生の中で
他の何より私の手に触れたものは鉛筆。
鉛筆にはいつも癒されている。
そして、救われている。
匂いやら、手で持つ感触やら、
削るときの音、書くときの音まで、
こんなにも
優れて、真っ直ぐな心を持つ鉛筆の存在。
私にとってかけがえのない一番身近な相手。

子どもの頃から鉛筆が好きで、特別な思いを寄せていた。
訳のわからない落書き、意味のある、ない文字を書いては
何とか心を落ちつかせ、寂しさとか不安とかを忘れ
夢を描いたりしたものだ。
本当の気持ちを本当に書けなかったり、
本当の事を書いても消してしまったり、
消しゴムに消されて薄っすらと残された鉛筆の後は
まさに傷の痕と似ていて時が過ぎても忘れられない。

今、娘が学校の宿題をやっている。
ひらがなの文字を書いては消して何度もやり直している姿を
見ていると鉛筆の声が聞こえてくるような気がした。

頑張れ!!ここでとめる、はらう、はねる、そう、良いね!

鉛筆はこの先、娘ににどんな思いを書かせどのような存在に
なって行くのだろうか。
消しゴムに消され、何度も書き続けやり直させる鉛筆の力。

私の鉛筆を持つ手にも力が入る。
鉛筆に感謝を込めて・・・これからもよろしく。





六月の病

ため息が徘徊する夜だった。

真実が遠ざかる夜だった。

苦い喪失感を何とかしたい夜だった。

泣き叫びたいそんな夜だった。

病の再発は、

いつだって六月。

最も弱い自分、最も脆い自分がここにいる。

お願い、

何も、何も聞かないで・・・。

いつものように、

何事もなかったようにしてちょうだい。


愛を確かめようと

手探りのごっこ遊び・・・・・間違いの遊びをするのを

もう、やめましょう。

お願い、

何も、何も言わないで・・・。

林檎の色も、味も知らない

あなたには理解の出来ない病。

虫に喰われた林檎をこれからどうするのか。

捨てるのか、捨てないのか、

あなたしだい、わたししだい。


こんな夜は

日にちの古い新聞紙を広げ爪でも切るが良い。

三日月のような爪。

六月の病を

爪と一緒に切り落とさなくちゃ・・・・・。







夫婦

木でありたいと
思っていました。

嵐が吹いて、
木の枝が一つや二つ折られても
黙って立ち続けていたいと
願っていました。

試練の多い
木でありたいと思っていました。

自然であり、不自然でもある
世の中の厳しい姿を、
無条件に受け入れることは
決して良いとは思いません。
しかし、
受け入れないと分からないのが
我々なのです。

木でありたいと
思っていました。

囀る鳥にも、
つつく鳥にも、虫にも、
同じ気持ちで向き合える
太い芯を持ちたいと
願っていました。

あいだを保つ
木でありたいと思っていました。

目の前の世界が全てでも
全てじゃなくても、
現実から逃げず
身の程を知った上で、
それなりの実を結び、
誰かに、何かに分けあうことができれば
良いと思いました。
しかし、
なりたくてもなれないのが
我々なのです。

夫婦の木に刻まれる年輪は
二人による
一つの成長の証なのです。

一人だけじゃ成長し続けることは
できません

起こりうる様々なことを持ち堪え
常に新しく芽生え続ける
夫婦でありたいです。

そんな木でありたい・・・・・。

今でも、その思いに変わりはないです。

へっこきおじさん

プププ~プ~ブゥン~

えっ!まさか、おならの音?

私の前におじさんらしい人が歩いていた。
かなり近い距離で・・・。
後姿からすると60代位かな。

大きなおならの音を鳴らし
おならの音に足を合わせ
普通に歩いて行くおじさん。

周りを全然気にせずプププの連発です。

私はとりあえず、息を止めました。
向かい風だったので・・・。

おじさんの顔を見てみたい。
おじさんを追い越して少し歩いた後、
さりげなく振り向いて顔をみました。
なんと、同じマンションの住人です。
なるほど・・・だから、おじさんと私、先から同じ道を
歩いた訳ですね。
このままだと一緒にエレベーターに乗るかも・・・。
避けたいですね、何としても。

あのおじさん、普段からよく見かけるのです。
おとといは郵便局で会いました。

しかし、おならを聞いたのは今日がはじめてなんです。

そりゃ、そうですよね!
私、何を言っているのか・・・。

へっこきおじさんの顔は厚いです。
あの厚い顔からは、読み取れる何かがありますね。
表情がないような、怒っているような、
もしかしたら、とても優しい人かもしれないし・・・。

実は私も人前で、思わず無礼におならをして冷や汗を
掻いたことがあります。
それも身内の前じゃなく・・・もう、その恥ずかしさは、
一生忘れません。

寝ているとき、たまに、家族の誰かの
おならの音が聞こえるんです。
いとおしいですね。
おならも、その人も。

へっこきおじさんの屁は笑えませんでした。
ただ、色んな人がいるな~と思いました。

あぁ・・・

はぁ~ため息がでる。
止まらない。
信頼を裏切ってしまった。
何て軽率な私・・・。
こんな自分が嫌だ。はぁ~
自分、
善き人ふりを、いい加減やめたらどうだ!

ごめんなさい!!

ひとつだけ

植物とのお別れは切ない。

ピカピカのアロちゃんが我が家に来たのは3年前。
毎日顔をあわせていたのに、今はもういない。

ごめんなさい!

よほど環境が悪かったのかな。
アロエの最後の姿はやせこけていた。


大切なものはひとつだけでいい。

寂しさを埋めようと、

あれもこれも所有すればするほど

増していく寂しさ。

何もアロちゃんのかわりにはなれない。

名前の知らない新しい植物達が悲しそうに

私を見ている。

おびえているのかな!

大丈夫・・・多分、大丈夫だよ。

悪い環境に気づいたら変えればいい。

変えないと、何も変わらないよね。

今回改めて思った。

ひとつなくして、それ以上を手に

入れようと執着している自分の欲深さを。

醜い動物だね・・・。

一つだけでいい。
ひとつだけ。 

月は何処に

月が無い。

冬の月は
あの空の扉を開けて
しつこく話をかけてきたのに
今は雲隠れ。

もう、嫌になったの? 私のこと・・・。

顔も見せてくれない。
声も聞かせてくれない。

夏の夜が短いのは私のせいね。

いいのよ、それで。
本当に それでいいの。

私のことが嫌いになっても、
私のことは忘れないでね。

生まれてから、一度も
愛された覚えが無いので、
今更落ち込んだりしないの。

私は平気。

でもね、
忘れ去られるのはとても悲しいの。



花の名前はミットナイトムーン。
月の代わりにみつめています。




伝言

昨夜

忍び足で出没した くノ一からの伝言。

突然すぎて びっくりしましたね。

胸に沁みるお言葉、そして 

秘密の処方術、

ありがとうございました。


「○○○の知らない ○○○がいるのだから 、

○○○の知らない ○○○がいても良いのです」。


さぁ、あなたなら

○○○に 何を当てはめますか?!

父の日

父さんが生きていたら、今年で90歳。

お父さんのことが大好きだった。


お父さん、ありがとうございます!

お父さんの娘で、本当によかった。

雑草

誰かが草刈をしていた。

立派に伸び続けている、

自立心の強い雑草。

あんなにも生命力の強いものが

他にもあるんだろうか。


余地無く、無惨に切られ

積み重なって倒れている萎びた体。

燦々たる陽光が彼らを枯らしていた。

始まりの匂いなのか、

終わりの匂いなのか。

鼻を刺激する青臭い、雑草の体臭。


雑草の死を追悼しているんだろうか!

ぽつんと立っている、

細い体の赤つめ草が泣いていた。


笑い声が聞こえてきた。

土の中から聞こえてきた。

「髭剃りに蒸しタオルマッサージ!
相変わらず気持ちが良いな・・・
これで、また、頑張れるぞ、へへへ」。

根こそぎ抜かれても

生き延び続ける図太さ。

凄いね、雑草。

こめんなさいね、皆さん!

それぞれちゃんとした名前があるのに、

雑草と呼び捨てて・・・。


あゆちゃん

友たちが私の家に遊びに来たよ。

初夏のカモミールのように

白い微笑みをうかべて。

嬉しかったよ。

日々の悩み事、

日々の暮らしの事など

沢山お話をしたよ。

懐かしい映画、

好きな映画の話もしたよ。

とこか、二人は、似ているね!

だって、友たちだもん。


あゆちゃん、

そのままでいいからね!

強くならなくていいからね!


友たちが帰ったよ。

特別な用事が無くても、

特別なお話が無くても、

暇じゃないのに、

わざわざ、私に会いに来たんだよ。

嬉しかったよ。

私も、誰かに、そんな友たちになりたいな。

恥ずかしいね。

私はいつも遠慮してばかり・・・。

自分から、

友たちへ会いに行かないとね・・・・・・。


昔から、私は
お花のカモミールが好きですね。
花言葉も。
友たちのあゆちゃんはカモミールのような人です。
彼女の事をよく知っているわけではないが、
知らなくてもいいと思っています。
すちゃんも、まゆちゃんもそうですね。
好きな男より、好きな友たちの方が好きです。
何度も友たちの事を書いていますが、
書いても書いても物足りないのです。
待ち続ける案山子だからです。
友たちを待ち続けては駄目ですね。
よく分かりませんが、
友たちって、凄く凄く大切な存在のような気がします。

当たり前なんですけどね・・・。



パーマ&カット

病院での検査を終え、家に帰る途中だった。
横断歩道の信号待ちをしていると、
美容室の看板が目に入った。

パーマかけたいな~
よし、入ろう!

15年ぶりパーマをかけてみると・・・面白い顔・・・。
こんなふうに変わるとは想像もしなかった。
予想と違いすぎて思わず笑ってしまった。

まるで、オーケストラの指揮者のようなスタイル。
短くて細い棒がとても似合いそう。

とりあえず、急いで自転車に乗り家に戻った。
ハァ~どうしよう、いつも、髪を結んでいたので
パーマで膨れ上がった頭がすっごく邪魔!!

迷わずハサミを取り出し、気ままに髪を切った。
今まで私は、自分の髪は自分で切っていたので、
失敗への恐れは一切無い。
時代の流行のスタイルとは無縁で、その上、
女磨きの努力を疎かにしてた私。
歳のせいかな、外面と内面のバランスが、ほんの少しだけでも
取れたらいいなと思っている。

それにしても、自分の髪を自分の手で切るのは気持ちがいい。
今日は特に気持ちがいい。
随分短くなったけど、パーマをかけたおかげで、
下手さが目立たないですんだ。

ちなみに、
美容室に入り、椅子に座ったとたん、自律神経の乱れによる
瞼の痙攣が起きた。
参ったな、汗も出るし・・・

大きな鏡の前、男の美容師さん二人が
丁寧に私の髪を巻いていた。
あ~もう、帰りたい!
後悔したけど、もう遅い。
何故こんなに緊張してしまうのかな・・・。

これから、多分、美容室には二度と行かないだろう。



白髪の男

白髪の男を知っている。

何も知らないのに、知っている。

いつもの夕暮れ、

橋の向こうから現れて、

静かに私の傍を通り過ぎる男。
 
すれ違うとき、

互いに目が合った。

胸に突き刺さるうつくしい痛み。

男の瞳がきれいに透けて見える。

人の、世の濁りを

代わりに払っている男。

孤独を抱えて、

死ぬまで尽くす限りなき男。


白髪の男を知っている。

何も知らないのに、何となく知っている。

雨の日も 雪の日も、

白髪の男は傘も差さず、

橋の上を歩いている。

すれ違うとき、

互に目が合った。

男は私に近づいてきて、こう言った。

「お互いの事、何も知らないけど
君と僕はずっと前から友達」。

私の手にくちづけする白髪の男。

優しい温もりが体中に伝わる。


白髪の男を知っている。

彼は犬であり、彼は友達でもある。




労働

アルベール・カミュは、

「労働なくしては、人間はことごとく腐ってしまう。
だが魂なき労働は、人生を窒息死させてしまう」
と、言っている。

単純に考えてみると、生きていく為には
労働は、必然的なこと。

様々な理由で人は働き、様々な環境の中で
好きでも、嫌いでも働かざるを得ない。

遣り甲斐も生き甲斐も感じず、幸福も不幸も感じず
機械のように働く人もいれば、衣・食・住に苦しみながらも、
大切な誰かと僅かな幸せを共有しながら働く人もいる。
家事をやる妻も、働く夫も、子供までが、
立派な労働者だと思う。が、

カミュの言葉を何度も繰り返し読み、
今の自分に問う。

今の私は魂のある労働をしているのか?!

本当のことを言うと、このような下手な文章を書いていて、
家計には何の助けにもなっていないが、
何故だろう・・・書き始めてから今まで感じたことのない
非常によい疲れ、溜まらない疲れを日々感じている。
以前、病院清掃の仕事をしていた時も感じてはいたが、
今程ではない。

誰よりも自分自身がよく分かっている。
何がやりたかったのかを・・・。
今の厳しい現実の中でやるべきことへ入り込むのは
なかなか出来ないと言うか、勇気がなかった。
しかし、
偶々ではなく、やらなきゃいけない時が来たような気がしてならない。
贅沢な時間を過ごしている気がして、
時々空に向かって手を合わせお詫びをしては、
また何かを書き始める。

うまく言えないが、書くことに義務感と怖さを感じでいる。

労働する魂の喜び、労働する魂の苦しみが人生をどのように
導いてくれるのかは分からない。

人生における、人それぞれの望む豊かさは千差万別。
自分で自分を窒息させない為に生きていくのは簡単なことでもあり
難しいことでもある。

腐るか、窒息死するか・・・・・。

死んだら腐るし、腐ると死ぬ。
死んだら息も止まるし、息が止まれば死んでしまう。

生きている内に、生きていたい。



昨日の夢Ⅱ

また、恐ろしい海が広がっていた。
何度も夢の中に現れる海。
崖の上から眺めているはずなのに、足元のすぐ前に海がある。
波もなく、むしろ穏やかだが、川のように流れている。
海なのに・・・。
昨夜の海は黒に近い濃い灰色で、
夢の登場人物が変わるたび、海も色を変えた。

ずっと、立ち続けている私を横切って
見知らぬ人たちが海の上を走り去って行く。
不思議だが、夢の中の私は不思議だと思っていないらしい。
ここからが怖い。確かに海の上には道があるが、
全く目には見えない。
道の幅も長さもわからず、皆がわあぁ~!と、叫びながら走り出す。
なので、先まで潔く走っていた人たちが突然海の中へ消えてしまう。
いわゆる、テレビのドッキリ番組でよくやる、
地面を掘り「落とし穴」へ落とすのとよく似ている。

一人残された私は迷っていた。
私も、あの海の上を走らなきゃいけないのか・・・。
でも、怖い。あの沼のような黒い海へ落ちたくないな・・・。

気がついたら、いつの間にか崖の裏を彷徨いながら歩いていた。
坂道が現れ、周りを見回しながら上ると、
素朴な木造の家が立ち並んでいて、
長い髪のアメリカ先住民のような人達が、植物の手入れをしていた。
誰だろう・・・一人の男が私に何かを言う。何語かわからないが、
後ろを見て見なさい!
と、言っている気がして、後ろを振り向くと、
先の黒い海が目に入った。しかし、海が、海が凄く小さい。
げっ!!どういう事?!
海の縦、横幅が、三十センチ位しかない。
まるで額縁に収まっているみたい。
しかもそれ以外六つの海が横に並んでいる。
まさに、三次元の世界!!
七つ目の30センチの海の中から、体の半分をこちの方に
はみ出して何かをぶつぶつ言いながら、
手で海をかき混ぜている人がいる。

神様ではないのは確かだが、神業ではある。

バカみたいな夢の内容だが、夢から目が覚めても笑えない私であった。
覚えている怖い夢ベスト10に入る位怖かった。





操り人形の砂時計

急かさないで、
そんなに急かすと後が無いよ。

物語を作っている最中なの。
だから、少しはゆっくりしててくれない?

急かさないで、
そんなに急かすと取り返しがつかないよ。

「物語は終わる為にある」
そんな事、私も分かっている。

運命を愛するように、
私なりに努力しているの。

私の為とはいえ、
見向きもせず、私をおいて行くのね。

どうすれば、あなたを、
裏切る事が出来るのかしら。

物語の主人公になりきれないまま、
埋もれたくないの。

瞬く間に埋もれて、消えて行きたくないの。

透明な優しさでむちを振るあなたが怖い。
私はあなたの操り人形のよう。

やっと私は気づいたの。
あなたの正体をね!

脆い私を閉じ込め、面白そうに
ひっくり返しては、物語を狂わせるあなた。

これ以上、あなたのおもちゃにはなりたくないの。

急がなくちゃ、
蓋を開け、ここから抜け出さなくちゃ。
何とか、出て行けそうだわ、
この、砂時計から。

誰かしら?
力強く蓋を抑え硝子の中を覗く者がいるの。

あぁ、あなたは・・・・・私そっくりの、操り人形。