中島公園













雨雲が東へと流れていく。
静かな中島公園・・・
私と銀杏を拾う老婆以外
近くには誰もいない。
私の目に映る風景、
風景の目に映る私。

お互い、ひとつにはなれないが
距離を保ちながら一緒にいる。

この景色を「綺麗だ!」何て言えない。
厳粛で清廉な佇まい・・・

しばらく私は、ベンチに横たわり目をつぶった。

小雨が、
瞼を、唇をくすぐる。
私はとても良い気持ちになった。

雨降る中島公園を後にし
逢いたい人に
逢えないまま、
しかし、笑顔で
私は南7条橋を渡った。

折り紙

半分折りました
また、半分折りました。
これから
どこを折れば良いのか
わかりません。

薄っぺらな紙一枚。

折り紙を
半分開きました。
また、半分開きました。
巻き戻しのように
元に戻りました。

しわくちゃな紙一枚。

小さくなるまで折り続けました
大きくなるまで開き続けました

心のようです
折り紙は・・・・・。

折り紙のようです
私の心は・・・・・。

ここに、色とりどりの
折り紙があります。

今は、
ただ、見つめていたいのです。

どんな願いも込めないで
どんな奇跡も信じないで
このままでいたいのです。

何にもなりたくない折り紙も、
あるのです。

七五三


















赤いもみじの葉
初雪の化粧。

着物の結び帯
可愛い七歳女の子。

鳥居くぐり氏神にお参り
心に冴え渡るお祓い鈴の音。

片手に千歳飴、どんな味?

ツバキ咲くツバメ島

ツバキ咲く
ツバキ島

ツバメ鳴く
ツバメ島

ツバキ摘む女の子は
春が嫌い。

綺麗なお花の首を
ちょん切っているのだから。

あなたの艶やかな髪
それは、ツバキの涙。

ツバメ悲しむ男の子は
幸福な王子が嫌い。

南へ渡る旅路の喜びを
足元で凍え死なせたのだから。

あなたの金色輝く宝石
それは、ツバメの涙。

ツバキ咲く春の島に
ツバメが飛んで来ました。

ツバメ鳴く南の島に
ツバキが流れて来ました。

女の子と男の子は
出会いました。
そして、結婚しました。

誰でもなく、ふたりだけの為に
幸せに暮らしています。

いつまでも・・・・・・・。


※「幸福な王子」はアイルランド出身オスカー・ワイルドの短編小説

すみません

話してちょうだい!
秋の西日が
幻のように
輝く理由を。

全ての物語を
あなたはご存知でしょう?

借りてきた念仏じゃなく
澄み切ったあなたの瞳で
おしえてください。

私なら
知っていること、
素直にお教えしますけど
残念ながら何も知りません。

季節の神様は毎日忙しいらしく、
私の声など聞いてくれないのです。

今、
どうしても
聞きたいのです。

運命を愛そうともがくとき、
なぜ、
あの美しい西日が
私を睨んでいるのかを・・・。

良い人を装いごまかしても
見すかされています。

きっと、
あれは、仏様の後光です。

美しすぎて怖いです。

雪が降り出したら
雪に隠れて、
「もういい~か~い?」と言ってくれませんか?
私が「ま~だだよ~!」と言うまで、
ゆっくり休んでください。

すみません。



三十年の間

おそらく私は今まで気づいていなかった。

私の間違いに・・・・・。

彼女に言われるまで、
自分の苦しみを三十年間折りたたんできたのだ。
広げて見せる程特別なことではないが、
彼女いわく、私への謎が解けたらしい。

三十年は長い。しかし、あっという間

この間、自分を苦しめているもう一人の私に逢えた。
正確に言うと彼女のお陰で逢うことが出来た。
見えない壁の向こう、隠し切れない後悔のため息。

彼女は私に言った。
「自分を責めないで!オンミのせいじゃないよ!」
この言葉、三十年間のあいだ、初めて聞いた。
彼女とは長い付き合いだが、今までこのような事について
一度も話しをしたことがない。
昔から責め続けている自分のことを・・・。

詩が死のように書かれ
死が詩のように泣いている私のこころはいつも暗く
いつも後悔の連続。
そう、何かを書き続ける理由のひとつ、
経験した全ての悲しみの原因が
自分のせいだっと思っていたのだ。

親不孝な娘・・・
親の死に、大切な人との別れを全部自分のせいにして、
攻め続けてきた。
それらを言葉にして書いているうちに少しは自分の罪が
報われているような錯覚をしていた。
私の為に「犠牲」になったと思い続けた年月・・・その気持ちが
今、突然なくなったわけではないが、
彼女の言葉で心が少しは楽になった。

彼女といるうちにいつの間にか
静かに朝が来て、二人は笑顔になった。

ありがとう! 

人、誰にも苦しみや悲しみがある。
何かのきっかけで重い心が軽くなるときもある。
以前にも言ったことがあるが、
私の場合何から何まで、必ず、友達から救われている。

私も友達から必要とされる人間になりたいが、
「頼りのなさ」の私。時々無気力をあじわうのである。

ひとりの時間


ゆっくり、静かにコーヒーを飲む一人だけの時間。
この時の身動き、自分の遅い動作が好きです。

妻でもなく、母でもない、私になる自由な時間

生活の時間に追われて時計を見なくてもいい。
好きなようにくつろげていい。

夜空を見上げ月を眺めたり、季節の星座を探したり・・・
本当に、なににも代えられない感謝の気持ちが自然にわきだしますね。

タバコと読みたい本をそばに置いて、おいしいコーヒーを飲む。
なんて幸せなひとときでしょう!

いつもはインスタントコーヒーを飲んでいましたが
ここ何日間ドリップ式のおいしいコーヒーをありがたく飲んでおります。
豆の香りがいいですね!
あの赤いコーヒーの実がこんなにもおいしい豆に生まれ変わるのですね。

日々、自然から動物から人からありとあらゆる
恵みをいただいております。
伝えきれない感謝の気持ち・・・
・・・今夜も、夜空に浮かばせそっと飛ばします。

さて、またコーヒーを淹れて飲むとしましょうか。



韓国の猫

















新美敬子の本「猫のアジア」の中から~
「滞在中に三十匹近くの猫を見かけたが、
つながれていないのは二匹だけだった。
つながれていなかった猫の一匹は、
チャガルチ市場(釜山)にいた猫で、玉葱とにんにく、
カボチャを売るテントの中にいた。
その猫は毎日、市場へ飼い主と共に通ってきているとのこと。
それだけ聞いても珍しいというか、韓国に限らず世界的に
見てもこういう猫はあまりいないから、これは特別なケースの猫だったと思う~。」


今はどうか分からないが、だいぶ前は韓国の猫は
大体紐につながれていた。
写真の猫(本の中)は、多分、自分の歯で紐を噛み切ったかもしれない。
紐、猫の顔、悲しい・・・。

昔、韓国にいるとき、我が家にも猫がいた。
しかし紐でつないでいなかった。
夜、こっそりぬけだし朝になると帰ってくる。
私が学校に行く頃顔を見せてくれる。
捕まったネズミとかミミズ、小鳥、セミ、木の枝を見せてくれる。
たくましい猫であった。

日本に来てから何かの縁で二匹の猫と暮らしたが
一度も外に出した事がない。
何回かケージの中に入れ川辺に連れていた事があるが
おびえてケージの中から一歩も動かなかった。
その姿が、とてもかわいそうに思えた。

先日、一軒家に引越しした夫の友人宅へ遊びにいたら
2匹のかわいい猫がいた。
三階建ての家で、隠れ場の多い広い空間。猫には最高の住まい。

猫と暮らしたい・・・・・
猫は飼い主を選べないが
・・・私も猫を選べない。
今後、何かの縁があればいいな。

昨日

昨日は、
あなたが
わたしを
教えてくれた日。
 
昨日は
わたしが
あなたの前で
新しく生まれた日。

昨日は
あたなと
わたしが
同じ涙を流した日。

昨日は
二人が
初めて
一人になった日。

愚かなわたしの
罪への意味、
あなたの答えで
なしとげました。
昨日に
刻まれました。

あなたとわたしの
昨日に・・・・・。


暗い井戸の中、
一筋の光・・・
・・・あなただったのですね。







川で洗濯

私は十七歳まで川で洗濯をしました。
盥に洗濯物を入れ仲良しの友達と夕暮れの川へ行き
肌着や靴下を大きな石の上にのせてごしごし洗いました。
村の人たちは遅くても昼までは洗濯物を洗い
家の庭先に干していましたが
友達と私はいつも夕暮れ。
洗濯物を夜、外に干したままにすると
魂を盗まれるぞ~と大人たちは言っていましたが
私達は少しも怖がりませんでした。

川に流された靴下と靴
川に流した悲しみ。

小学校六年生のとき、
仲良しの友達が
冬の川で溺れて死にました。
私の故郷の冬は
肌が切れる寒さです。
冬の川は厚い氷に覆われ、
村の人々の楽しみは
川の上に立ち、のこぎりで氷を大きく切断し
船遊びをすることでした。
浅い氷の上にいた友達が突然
氷の下へ消えました。
友達が見つかったのは
長い冬が終わり
蓮華の咲く春でした。

17歳まで川で洗濯をしながら
ずっと、ずっと、
友達の事を思いました。


最近、洗濯機が壊れて手で洗濯をしていた。
大変だったが心が豊かになるのはなぜ?!
家族の下着、タオル、靴下などを自分の手で一つ一つ洗っていたら
いつも間に微笑んでいる私がいる。
しかし、大変。足、腰、腕が痛い。
夫が洗濯機の故障をパソコンで調べたらしい。
しばらく、ドライバーで開けたり閉めたりと忙しそうに動いた。
ごみが詰まっていたらしい・・・洗濯機が・・・なおった・・・。
どうだ!!自慢げな顔・・・・・。

川で洗濯をしていたあの頃がとても懐かしい。
川で亡くなった友達・・・寒い冬になると、
もっと思い出す。

パラダイスガーデン

騙された

軋むドアを開けると
見るからに
そこはパラダイスじゃない。

土曜日の夕暮れ
駅前に漂う娼婦の甘い香り
そしてあふれる軍人達の笑い声

あの人たちは
夜を待っている。

表と裏をいい具合に演技できる夜

・・・・・・・・。


私は
果物屋の前で
ある男を待っていた。

彼は
ソウルに住む浪人
憧れのソウルの街の人。

二人で
果物屋の二階にある臭い階段を上った。

店の名前はパラダイスガーデン

何を想像してあの階段を上ったのか・・・

うつくしい物語の始まる予感は
いつも裏切られる。

そこは食堂
造花の赤いバラが邪魔臭いほど飾られている。

パラダイスガーデンがまさか食堂だったとは・・・
私は
辛いイカ焼きを食べた。
男は言った
「明日の朝一緒にソウルへ行こう!
今夜は・・・どこかで泊まろう!」

コップ一杯の水を飲み、
私は男に言った
「これから私、一人で行く!」

今思えば
パラダイスガーデンが
食堂で本当によかった。

憧れが失望に変わる
いい事だ・・・
失望こそ、強く生きていける心の支え。

私が、騙されたと言っているのは
自分の頭の中
パラダイスへのシナリオ
しかしまた騙されることもいい事だ
・・・目が覚める。

パラダイスは、生きている限り、この世には無いかも。

胸を張って、堂々と

「胸を張ってとか、堂々ととか
そんな事言いません。」
いつもの○○○でいてくれるのが良いと思います。

久々、くのいちからの伝言です。

まさしくその通りです。ありがとう!


最近、新しい仕事を始めたので
毎日追われています。
覚える仕事の事よりも、職場の人たちとの関係がなかなか難しいです。
嫌だと思えば嫌で、まぁ~仕様がないかと思えば仕様がない事ですが、
問題は、自分の心の中心ですね。
揺れる心、本当は他人が私の心を揺らしている訳じゃない
なのに、心の狭い私は他人の言動を悲しむ
そして余計な力を出して立ち向かうようとしている。
後から、自分が自分自身を激しく揺らしていることに気づく
・・・・・・・・・悲しいです。
私、未熟な人間です。

いつもの私でいればいい・・・
よく分からないけど、分かる・・・。

人生、色々と面倒な事も沢山あるが・・・・・大したことない
ありがたく、しっかりと生きていきたいですね。

時の流れ

















中島公園、散歩するすちゃんの目にとまったトンボ。
この景色(写真)を眺めると
故郷を思い出す。
秋に染まる故郷は
一日中薄暗い、寂しい風が吹いていた。
そして、いつもの川辺には、やつれて折れそうで死にそうで死なない薄が
しなやかにトンボと踊っていた。
記憶の中、昔の事なのに昨日の事のように鮮明に思い出す。
時の流れが回って回って回って、戻って来る。
流れて無くなるんじゃないみたい・・・・・。

風の色

私には見える
風の色が
今は秋
蜂蜜色の風

私には見える
風の色が
今は秋
茜色の風

私には見える
風の色が
今は秋
錆び色の風

眠る落ち葉の墓
積もっていく色彩
まもなく吹いてくる
藍色の風

今宵、
剣舞のように舞う
美しくも儚い残酷な風

目を閉じ飛び込み
混ざりあいたい

風そのものになり
私は見たい

何も見えないくせに
軽々しく風を歌う
私の色を。