ある夜の消しゴム

いつかの
クリスマスの夜、
私の枕元に
大きな消しゴムが
置いてあった。
それは
サンタクロースからの
クリスマスプレゼント。

消したい記憶を
自由に消せる消しゴム・・・

私は
ゆっくり、
静かに降る雪を見ながら
ゆっくり
静かに記憶を消していた。

悲しかった記憶
悔しかった記憶
寂しかった記憶
怖かった記憶
夢見た記憶
嬉しかった記憶までも
一つ一つずつ消していた。

消して消えゆく記憶は
とても切ないことだっと感じながら、
沢山の記憶を今まで消してきた。

しかし
不思議なことに
消しゴムは
段々大きくなっていく・・・
・・・・・
今夜
私は
窓に映る横断歩道の
信号機を眺めながら考えた。
もう、
消しゴムは
サンタクロースに
返そう・・・。

私はこの頃、写真を撮りながら思うことがある。
見たい、感じたい、憶えていたい、忘れたくない・・・
一日でも長く自分の心に残したい。
その気持ちが表現に繋がっているのか
繋がっていないのかは
別として・・・。
正直、自分の眼や自分の記憶が不安だが
その不安を紛らわすために逃げたりしたくない。
わざわざ消したくない。
言葉からも逃げない
記憶からも
自分からも
人からも・・・そうしたい。
瞬間を大事に生きる為に。








私は木を見る

葉を揺らす森の風
土を濡らす森の吐息
鳥を歌わす森の魔法

幼いあの頃、
私は、
森の中で
何を見ていたのだろう・・・

山の
湧き水を供え、
大きな木の下で祈る母は
何を祈っていたのだろう・・・

母の手をつないで
山から下りた時、
森から出た時、
私は後ろを振り向いた。

確かに、
動いていた
・・・一本の木だけが
・・・母が
祈りを捧げた
その木だけが・・・。

私は木を見る
大人になっている今でも
見続けている

あの頃の私が
今の私に
見続けさせているような気がしてたまらない。

私は木を見る

しかし、
見えていないのだ。

実は、
何も
この目で見てはいないのだ。




夜の欠片

青く白い欠片の降る夜、
私は
3本の
燃えそうな赤い薔薇を
眺めていた。

片目を片手で隠し、
もう一つの
片目を大きく開き、
しばらく、
静かに
眺めていた。

悲しいこともなく、
泣きたい気持ちでもないのに
涙が
零れ落ちた。

不思議な夜だ
寒い6月の夜だ

そして
夜の欠片、
薔薇の棘が
こころと眼を刺す
とても
痛い
夜だ。



さよならしてみました

さよならを
告げる相手も
さよならを
残し去る
街もないのに
さよならと
つぶやきながら
さよならしてみました。

愛する人も
逢いたい人もいないのに
愛してる
逢いたいと
つぶやいてみました。

つまらない、
憐れな、
寂しい人生です。

うそつきの
悲しい人です。

信じない、信じたくない

何も信じない
自分の眼で見たもの
耳で聞いたこと
口で言ったこと
感覚さえ信じない。

何も信じたくない
世界の出来事も
魂の言葉も
愛の詩も
自分の心さえ信じたくない。

何も信じない
労働の汗も
回る時計も
正義も
未来なんかも信じない。

信じたくない・・・

私、
信じることが怖い
とてもとても怖い。