白い過去

白い過去の中には
毎朝母と祈りを捧げる
大きな大きな
木がありました。

祈る私の傍には
ニワトリもいました。

息を吸うと
鼻と喉が痛いほど
寒い冬の朝

目を閉じて祈る
母の頬に
細く
薄く
光るものが
流れました。

何度も
見ました。

私は
祈る振りをしながら
いつものように
ニワトリに
キビをあげました。

そして
母を泣かせる
大きな大きな木を
睨みました。

その瞬間が
いつまでも
いつまでも
消えません。

その瞬間から
離れたいのに
ずっと
私に付いてきます。

だから
私は毎日木を見つめます。

この瞬間の私も
いつかは
白い過去になるのでしょう。

大きな
大きな木は人間を
泣かせるのです。





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