蚕と糸車

家の隣にある小さな橋を渡ると
桑の畑があります。

私が飼っていたカイコは
桑の葉が大好きでした。
私は毎日カイコの世話をしました。

ある日、
カイコはわたあめのように
ふわふわと膨らみ、
白く丸く体を変えました。

マユの中で、
一回
体をきれいにして、
もう一度
生まれ変わるのでした。

不思議な
不思議なことです。

熱を出し、
怖い夢から目を覚ました
ある日のことでした。
母の姿を探すと、
うす暗い小屋の中で、
窓を差す僅かな光を浴びながら
糸車を回していました。

母は太い指先で
白い糸を紡いでいました。

白い糸は
私が飼っていたカイコです。
羽が生えるのを
ドキドキしながら
待っていたのですが
カイコは白い糸になりました。

泣いている私に母は
こう言いました
カイコは羽が生えても飛べないの!
何回も生まれ変わるけど、飛べないんだ!
でもね、
やわらかなきれいな糸を
私たちに残してくれるの・・・
そして
その糸は大事なお金になるのよ!

カイコがお金になるなんて
・・・・・
不思議な
不思議なことでした。


私が今思うことは
自分では自分を何回も作り直せないけど
せめて、一日ほんの少しだけでもいいから
自分が良いと思う方向へ進んでいけるように
努力することです。
多分、
カイコのように
何度も生まれ変わることは出来ませんが
新しい気持ちで日々を過ごしたい。
その中で、
まだ、逢ったことのない自分に
いつか出逢えることを願いたい。


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