風景の中




















豊平橋を渡り50メートルほど進むと
いつもこの景色を目にする。

いつも、じっとして眺める。

冬の間は夕方五時頃、
今の時期なら夕方六時過ぎかな。


「今私は北国にいる。
高台の上でも堤防の上でもなく、
今、ここにいる。」と思わせる暮らしの中での
大切な景色なのだ。

人生の儚さを思うようになったあの頃、
私の村は周期的に大洪水に苛まれ多くの人が
悲しみに覆われていた。
我が家は川の堤防の真下だったので他の家よりも
被害が多かった。
泥んこの川にのみこまれ流される人も見たし、
流される家もヤギもブタもイヌも見た。

川の水が引くと
友達を集め川の下流へ行き探した。
しかし、下流には下流があり、
私達はいつか川の終わりのところまで行ってみようと約束をしたが
あまりにも遠く道は途切れあきらめざるを得なかった。

堤防の上、夕暮れの川を眺めながら遠くの向こう、高台で暮らす
街の人々のことを思った。
あの時の風景がいつまでも忘れられない。
何といえばいいのか・・・
変えられない宿命を感じる風景だったのであった。

その後私は頻繁に橋を渡り街へ出かけ迷子のように歩き回り
ドキドキハラハラしながら高台の方から
私の村を眺めた。
堤防に隠しきれないトタン屋根・・・貧しい村、洪水の村、ドヤ街。

ああ~いっそう何もかも残らず流されちまえばいいのに・・・。


私の人生は
昨日も今日も明日も橋を渡っている。
今になっては
変えられない宿命など怖くない。
ありのまま受け入れることにした。
暮らしの中での
自分を埋め込められる愛しい風景に守られ、
気ままにお邪魔しながら
今を生き抜くことにした。

風景の中には誰も知らない明日がある。


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