壺の中

壺の蓋を開け、
壺の中を覗いた。

壺の中に手を入れ、
掴み取った。

いくらかな?・・・
数えてみた。

何を買おうかな?・・・
考えてみた。

悩んだ末、
思いついたのは
ブリキの貯金箱。

かちゃんかちゃん、
銅貨の音
かちゃんかちゃん、
痛い音。

壺の中を覗いた。
壺の中に手を入れた。

盗んでも
盗んでも、
母は何も言わない。

盗んでも
盗んでも、
壺は何も言わない。

まぬけで、
可笑しげな泥棒ごっこ。

母は、
ブリキの貯金箱から
銅貨を取り出し、
壺の中に入れた。

娘は、
壺の中から
銅貨を掴み取り、
ブリキの貯金箱の中に落とした。

盗んでは、盗まれる、
その繰り返し。

いつの間にか
壺の中は
銅貨でぎっしりになった。

いつの間にか、
ブリキの貯金箱も
銅貨でいっぱいになっていた。

どうして?!

どうしてなのか・・・
・・・分からない。

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