小岩の月夜

あの、
丸い銀の塊を
撃ち落としたい。

東京、
無情な小岩の月夜・・・

懐かしい母国語を
ここでは聞きたくない。
出来れば読み書きも、
話も、したくない。

誇りのない愛国心溢れる、
可笑しげな焼肉屋。

焼かれているのは
牛でもなく、豚でもなく
奴隷のように扱われている
不法労働者の汗と涙。

隅々まで飛び散る
歪な言葉の銃弾。

男店主は
礼儀というものをしらない。
女店主は
恥じらいというものをしらない。

毎晩、
人を騙すため、人に騙されないため
月夜の下でまぬけな宴会を開いている。

狭い沼の中に潜み、
弱者の血を吸い上げ、
次から次へと
頬張り貪るように金を食べている。

それは、実に、哀れな姿。

あの、
丸い銀の塊を打ち落とした。

東京、
無情な小岩の月夜・・・

懐かしい母国語、
私の、
最初で最後に吐き出した汚い言葉。

「さらば、XXX達よ!くたばれ!!!・・・」

店主らの光る目をはねかえし、
小岩の月夜の下、
明日に向かって歩き出した。

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