パラダイスガーデン

騙された

軋むドアを開けると
見るからに
そこはパラダイスじゃない。

土曜日の夕暮れ
駅前に漂う娼婦の甘い香り
そしてあふれる軍人達の笑い声

あの人たちは
夜を待っている。

表と裏をいい具合に演技できる夜

・・・・・・・・。


私は
果物屋の前で
ある男を待っていた。

彼は
ソウルに住む浪人
憧れのソウルの街の人。

二人で
果物屋の二階にある臭い階段を上った。

店の名前はパラダイスガーデン

何を想像してあの階段を上ったのか・・・

うつくしい物語の始まる予感は
いつも裏切られる。

そこは食堂
造花の赤いバラが邪魔臭いほど飾られている。

パラダイスガーデンがまさか食堂だったとは・・・
私は
辛いイカ焼きを食べた。
男は言った
「明日の朝一緒にソウルへ行こう!
今夜は・・・どこかで泊まろう!」

コップ一杯の水を飲み、
私は男に言った
「これから私、一人で行く!」

今思えば
パラダイスガーデンが
食堂で本当によかった。

憧れが失望に変わる
いい事だ・・・
失望こそ、強く生きていける心の支え。

私が、騙されたと言っているのは
自分の頭の中
パラダイスへのシナリオ
しかしまた騙されることもいい事だ
・・・目が覚める。

パラダイスは、生きている限り、この世には無いかも。

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