石鹸

泡のような優しさで包み込み
仄かな香りで五感を潤わせ
日々の汚れを落としてくれる
石鹸のような恋人が欲しい。

夕暮れの悲しみも、
明日への
期待も不安も流してくれる恋人。

手のひらに触れる
真っ先にはあなたがいて
手のひらから消える
真っ先にもあなたがいる。

そんな恋人、
いるはずも、出来るはずもないのに。

そうなんだけど・・・
空想するのはいつまでも面白い。
こんな歳になっても、
私の空想の世界は果てしない物語でいっぱいだ。

私は両手の中に石鹸を転がし泡を立てて
匂いを嗅ぐのが大好きだ。

朝、7時。
全力で走り6年間乗り続けた中・高校の通学バス。
バスは教会のある坂道下を左へ曲がり
牛売り場の停留所で止まる。
いつもそこで私はバスに乗った。
バスの扉が開くと乗客(ほとんどが学生)達は
いつものように指で鼻をつまむ。
私はなんとも思わない牛売り場のにおいだが、
乗客達には臭いにおいらしい。
バスに乗ると私はある男を探す。
多分私より2~3歳年上の男だが、
隣へ近付くと爽やかな良い匂いがする。
男の顔はいまいちで、残念なことにニキビだらけ・・・。
なのに、素敵。なぜか・・・。
で、時は流れ・・・・・二十歳の頃、
釜山の国際市場(闇市場)を
ぶらついてたら生活雑貨売り場であの匂いに出逢えたのである。

ニキビ男の匂いだ。

私は笑いが止まらなかった。
その匂いの正体はニキビ専用の石鹸だったのだ。
へぇ・・・・・・・。

毎朝、石鹸で顔を洗い新しい一日を迎える。
石鹸は私にとって大切な欠かせない存在。
石鹸のように、
自分自身、最後まで使い、せめて何か一つ、
キレイに残しておいてなくなりたい。

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