お兄さんと旧正月

夜、韓国にいるお兄さんから電話が掛かってきた。

3ヶ月ぶりのお兄さんの声。

相変わらず、私のことを心配している。
そして、ついに、
お兄さんは泣いてしまう。

心が痛い。苦しいほど・・・。

お兄さんは今年で六十一歳。

ずっと、一人暮らしの生活
ずっと絵を描きながら、ずっと孤独と向きあいながら
ずっと肺の病気を患いながら。

複雑な私の家族関係・・・。

私がお兄さんの存在を知ったのは10代頃だ。

ある日、母は私を連れて山の谷間にある集落へ行った。
そして、小さな山小屋の前で「この中にオンミのお兄さんがいる!
今、お兄さんは病気で、病院へ連れて行くの。必ず、連れて行くのだから、
オンミも手伝いなさい!」

私はその時、何が何だか訳が分からなかったが
凄く嬉しかったのを覚えている。

「えっ、私のお兄さん!?」

お兄さんはその山小屋で絵を描いて暮らしていたらしい。
木の壁には沢山の絵が壁紙のように貼られていた。

私とは顔が全然似ていない。
父にも母にも似ていない。
草食動物みたいにお肉は食べないで草ばっかり食べる。
咳をする度にだんご虫のように体を丸める。つらそうに・・・。

思えば、
お兄さんの人生はあまりにも・・・かわいそうである。
人の人生を軽々しく
‘‘かわいそうだ’’と思うのは失礼なことだが、
それ以外の言葉が見つからない。

いつも人に騙され、いつも損をする。
いつも貧乏で、涙もろい。

私は、そんなお兄さんが大好きだ。

30分位お兄さんと電話で話をした。
毎回、お互い同じ事をくり返し話す。
そして毎回私は守れないまま、今度こそ会いに行くからね・・・と言う。

電話を切った後の、
自分が凄く嫌い。情けない。

明日は韓国のお正月。
お兄さんは、せめて私の声でも聞こうと、
重い受話器を取ったに違いない。

頑張ろう!頑張ろう私。

いつか娘を連れて韓国へ行き、笑顔でお兄さんに会いたい。
お兄さんに娘を逢わせたい。

お兄さん!
どうか元気でいて下さい。

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