入る




















部屋へ入る
畳の上を歩く
漂う光を
手に乗せ
静かに息を吹く。

私へ
部屋が入る
心の中へ座る
籠もる微熱を
母の手のようにさする。

部屋へ入る
畳のかおり
檜の優しさ
窓辺の物語
天井の夢見る
世界へ入る。

一つになりたい。

私へ
部屋が入る
心の中へ横たわる
流れる暗い詩を
父の背中のように受け入れる。

部屋へ私が
私へ部屋が
入る。

一つになる。

そして、
お互いに
何も
語らず
出ていく。

そして、
お互いに
何も
残さず
離れていく。

一つになれたから。


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