地下鉄

こもる体臭をどこにも吐き出せず
細い電車は真面目に走っている。

暗い鏡の中を思わせる車窓
そこに映し出される私達の素顔。

上京した田舎者は
落ちつきのない視線の置き場を探しながら
気づかれないように周りを盗み見ている。
愛おしく思えるほどの無表情、無愛想・・・・・人、人。

冷たい蛍光灯
乗客達の弱々しい青白い姿
不思議な詰め合わせの箱の中、
見知らぬ人々一人ひとりが
まるで自分の姿のように見えてきた。

こんなにも身近で
他人同士の肌がこすれているのに
誰もが口を閉ざし、
薄っぺらな物体に夢中だ。

都会の昨日と今日、明日がごちゃついて
地下から地上からとめどなく話しかけている。

寂しいんだ・・・皆
皆、寂しいんだ。

寝ている人、痴漢する人
乗る人、降りる人・・・
あなた、わたし・・・・・。

地下鉄に身を揺らしながら
とうとう下車駅を通り過ぎ、終点駅まで行き着いた。
このまま、
地上に出たくないと、思った・・・・・。

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