手のぬくもり

ぬらした手ぬぐいをそっとしぼり
熱する額にのせてくれた母の手。

秋風に舞う落ち葉のような
かさかさの指先
何度も、何度も
娘の頬を撫でる。

母の手は魔法の手
一番早く効く薬の手。

家出の初日、
夜の9時を知らせるサイレン
身軽く流れる川のせせらぎ
純粋な10代の冬だった。
真っ暗闇の小さな橋の上で
娘の帰りを待っている父。

寒かっただろう!
優しく抱きしめ何度も、何度も
背中をさする父の手。

40代半ば
このような私が、これからもどうにか
生きていけるのは
父と母の手のぬくもりを
忘れていないからなのである。

何より大切なのは
とても単純な動作、手をにぎる事。
言葉など・・・いらない。
何も・・・・・。
手をにぎるだけでいい。
手から伝わるこころ、そこに嘘はない。

その人の手を見れば
その人の事
わかると言うけれど、
その人の手に触れないと
その人のこと
わからない。

今私は無性に
手のぬくもりを求めているのかも。

男と女の恋心とか愛とは違うぬくもり、
心に伝わる手のぬくもり

私から伝えよう、大切な人へ。

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