秋の声

約束とおり、
泣き崩れる鳥たちを
南の島へ飛ばした。

北国で好きになった女の子は
短い夏の間死んでしまった。

「あの鳥かごの中に
私の骨を入れて
海へ流して・・・」。

近づく事の出来ない
細い白目の水平線。

蝉の抜け殻は
蝉になって生まれ変わるのか、
それとも
永遠に死んでしまうのか。

うつくしさも、洒落も知らない
その上、生真面目な人間は
真夏の残酷さをよく知っている。

望みとはなんだ!
削除されない悲しみってなんだ!
夢の中で生と死をさまよう
黒髪の少女は誰だ!

小船に乗って、点になるまで
西へ西へ流れた。

最後の夏、
熱気塗れの儀式は終わった。

躓く小さな生き物
微熱に鎮痛剤
添い寝の母の腕枕
遠い記憶、錆びた時計の針
とろりと溶けて狂いだす。

季節の病気とともに・・・・・。

けして
振り向いちゃいけない昨日の夏

長い空の支配者は
明かりの神を恐れ
砂浜の貝殻を踏み潰した。
やっと手に入れた黒粉を
丘の上から
西日へふりかける。

夏の悲しみを忘れたいかのように・・・

泣き崩れる鳥たちを
南の島へ飛ばした。

その夜、
星空の欠片が
イカ釣り船のように
海の上に漂った。

そして、
北国で好きになった女の子は
誰にも内緒で
こっそりと
秋の声になって帰ってきた。

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