巫女と葡萄

特別に暇な時は
ひとりで
ゴミ捨て場の
山ヘ行きました。

そこから覗く巫女の家

運がよければ
巫女に逢えるのです。

白鳥のように白く、
蟻にも
野良犬にも
ゴミにも
わたしにも
天使のように
優しい巫女さん。

巫女の庭には
切り絵のような
不思議な葡萄の木があります。

低く、重く
くねくねと伸び続ける蔓。

いつか、
私のいる小さな村が
葡萄の蔓に覆われたら
大変です。

葡萄はおいしいけれど
葡萄の蔓は怖いと思いました。

その日も
巫女は葡萄一房、
わたしの手に持たせいいました。

「オンミの
涙の粒を召し上がれ!
涙の種は飲み込んじゃだめよ・・・・・
それから
もう、この、ゴミ捨て場の山には来ないでね!」

葡萄は涙の粒・・・
種は、飲み込んじゃだめ・・・。


無性に葡萄が食べたいときがあります。
食べたくなくても、
ずっと見つめていたい時があります。
葡萄は、
わたしには、
いつまでも不思議な果物なのであります。


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