棗の木

無色のひかりが降り注ぐ

正午の庭。

熱る体を

どこにも隠せず

棗の木は、立ち尽くしていた。

何かが可笑しい・・・

私は 試されている。

見る目のない何者かに・・・。


鶏もヤギもウサギまでが

小屋の中でのんきに昼寝。

こんなにも 静かで、

少しの嘘もない平穏な日

息苦しい・・・嫌いだ。

我慢できないほど 嫌いだ。

古家の縁側、

くつぬぎ石に置かれた履物を拾い

思いっきり庭先へ投げた。

そうすると、棗が

棗が、ぽんぽんと落ちて来た。

私は 

裸足のまま棗を拾い口の中に入れた。

甘くて おいしい棗・・・。


いつの間にか

鶏もヤギもウサギも起きていて、

庭に集まったひかり達が

安心したかのようにゆっくりと消えて行った。


記憶に残る悲しみの中には

私を励ましてくれた数々の存在がある。

当たり前なのに、

棗の木からは

実れる事実を教えてもらった。








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