釜山、月見の丘

丘の上から海が見える
海の向こうには地平線が見える
地平線の先には楽園がある。
楽園の人々達は愛し合い、
媚びず諂わず暮らしている。
ここから私、
逃げ出したいの。
哀れな運命の鎖を
切り落として・・・


丘の上から煙突が見える
煙突の向こうには
工業地帯が見える。
工業地帯の隣には
労働者の宿舎がある。
そこから私、
夜逃げしたの。
大事なラジオカセットを
置いたまま・・・

丘の上から月が見える
月の上から私が見える

私から私へ、
何も、何も見えない。

でも、私行くの
きっと、笑える日を信じて・・・・・




釜山のダルマジウォンドック(月見の丘)は
へウンデ海べにある。

工場での12時間の労働は辛かった。
働けば、働くほど心が溶けって無くなりそうで
怖かった。

いつも仕事の送りバスを乗らず丘へ行った。
海を見つめていた。
・・・・・・・
いま、
私は日本にいる。
あの、海を越えて来たのである。