捨てた故郷

北の列車に乗ろうかな、
南の列車に乗ろうかな

父さんも
母さんも居なくなった。
犬もネズミも、
猫も居なくなった。
兄さんも
姉さんも居なくなった。

私だけが、残された

家も無くなった
お米も無くなった
お金も無くなった
ゆめも無くなった
二十歳も無くなった。

体だけが、残された

山に、海に、河に
野原に別れを告げた。
友たちに別れを告げた

2月の冷たい夜雨
駅のプラットホーム

とこに行けばいいのやら、
何をすればいいのやら

もう、二度と帰るもんか
もう、二度と思い出すもんか

さようなら!!

捨てたはずなのに・・・
毎日、毎晩故郷の夢を見る。

故郷だけが、いつも
いつまでも
そこにある。

私の帰りを待っているかのように。