病院清掃員

磨いていました。
拭いていました。
掃いていました。
集めていました。
分けていました。

やっても、やっても
終わらないです。
やっても、やっても
きれいにならないです。

毎日のように
葬儀屋の人は
業務用エレベータで
死人を運び、
毎日のように
白いガウンの人たちは
非常階段を駆け回っていました。

そして、毎日のように
微笑ましい産声が響き渡っていました。

優しい病人の眼差しは
悲しいものでした。
ヒステリック看護師さんの
横目は冷たいものでした。

ここは、
世界一 忙しい所で、 
世界一 人間の本質を
表わす所です。

古ぼけたモップを
新しく換えました。

ひび割れた指先、
尿検査室の鏡を磨いたら
映っていました。

病院清掃員、
私の顔でした。

幸福のような
不幸のような
私の顔。


磨いていました・・・