天秤座

人間の立ち入りを阻む
草原茂みの奥には
神々の沐浴場がありました。

平等と言う名の女神は、
両手と両足を聖水に浸し
ミントの葉三枚を摘み、
口の中へ入れました。

そして、
オフィーリアの様に水の上に浮かび
一眠り・・・・・。

長引く、
神々の人間への審判議論は
結論を見出せず終わってしまったのです。

重い天秤を持ち続けている為、
女神はひどく疲れていました。

月桂樹に掛けられた、
しなやかに揺れ動く紫色のドレス。
木漏れ日に映し出されるシルエット
樹の枝に触れながら、
淑やかに踊っています。

原罪と贖罪、
美醜、善悪、
罰・・・・・。

決して、どちらにも偏らない平等。
沐浴を終えた女神はドレスを身に包み、
天秤を持ち草原を歩きました。

遠い所から、
女の泣き声が聞こえてきました。
人々から石を投げられ、衣を破られ、
髪の毛を毟り取られ、
体は傷だらけです。

罪びとの証、
くっきりと額に烙印が押されています。
悪行を繰り返す、執念深い悪女!

死を待ちながら、
懺悔の涙でも流しているのでしょうか!

平等と言う名の女神は、
女の涙の意味を分かっていました。

女神は女に言いました。
弛みなく光りなさい!
女神は女の涙を拾い空に散りばめました。

我々が投げた石。
我々の悪行。
我々は何一つ、賢明に裁く力など
持っていません。

神々は
我々の愚かさを教える為、
空の上に印しをつけました。

天秤座を見つけたら、
思い出して下さい。
人間が人間へ、
人間の、最後の審判を下している
愚かな悲しみを・・・・・。

※オフィーリア(ジョン・エヴァレット・ミレイの絵)
私は、オフィーリアを見ると天秤を持っている女神の姿を想い出す。
川で溺死するかわいそうな彼女だが・・・
その姿がうつくしい。
絵に描かれているオフィーリアは両手を少し上の方に上げている。
まるで、天秤を持っているかのように・・・。

ちなみに、アキ・カウリスマキ監督の ‘‘ハムレット・ゴーズ・ビジネス”の
映画の中にも登場するオフィーリア。
「ハムレット」のパロディなんですが、好きな映画です。




















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