鉄くずと飴

酒屋の隣り、
大きな桐のある空き地。

飴売りさんが、
リヤカーを引いてやって来た。

ごつごつの手には、
大きな鋏。
チョキ、チョキ、チョキ、
飴切り鋏の音
チョキ、チョキ、チョキ・・・・・

  鉄くず、持って来る子はいい子!
  いい子には、飴をあげるよ!

子どもに、中毒を引き起こす
チョキチョキの音。
そして、飴の味

ありとあらゆる物を
あの飴売りの爺に売った。

鉄の包丁、
キムチ用の白菜を洗う盥、
薬缶、南京錠、
草取り鎌・・・

交換して貰った飴を
家に持ち帰り
麦芽の粉をそっと落とし食べる。

年に、
二、三回、
切ないほど甘い、飴の為に
吐いた嘘。
  
  私ねぇ、毛むくじゃらの鉄泥棒が、
  逃げていくのを見たんだよ!!

父と母は当然知っていたはず。

飴売りに売った、大事な家財道具。

鉄泥棒は、私だった。

チョキ、チョキ、チョキ
チョキ、チョキ、チョキ・・・




大好きな映画がある。
ダニス・タノヴィッチ監督の 「鉄くず拾いの物語」
実話から生まれた物語です。

私は映画の、最初から最後まで共感する事ばかりで
胸が痛かった。
貧しい。くっそ貧しい・・・しかし、愛がある。沢山の愛がある。

昔私は、おやつを買うお金など無くて、
家にある鉄物を飴と交換してた。

懐かしくもない想い出だが、貧しかった我が家にも、
家族のかけがえのない愛があった。
「鉄くず拾いの物語」を見終えて、複雑な気持ちの中、
改めて‘‘愛”について考えた。

世の中には、想像を遥かに超える貧しい人々達がいる。
綺麗事を言っているかも知れないが、
愛の為に、愛を信じて、容易ではないが生き抜いて欲しい。





























 

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