小石達

一仕事を終えて、
薪けむりは煙突から
西の空へ消え行く。

曇りかかった窓からは
薄い光が漏れていた。

何やら、微笑みを浮かべ
夕飯を頂く家族の姿。

食器を並べる音
お茶を注ぐ音が
聞こえるほど
色あせたぼろい家。

私には
しあわせの溢れる
お城のように想えた。

いつか、
家族と食卓を囲み、
暖かい食事を取りたい
・・・そんな事を夢見ていた。

日が沈む頃、
駅に行かない日は
人々の家の明かりを数えながら
川辺まで歩く

薄暗い川辺。
そこには、しあわせなどない。
すっぽりと、
目の中に入る月の光だけ。

段々と、川までが横たわり
そろそろおやすみ!と
私の帰りを急がせる。

今日も、長い時間お邪魔したね!
おやすみ、又明日!

いつもの様に小石を拾い、
人々の静かな寝息を聴きながら
歩いて帰る道。

一人ぽっちの部屋。
裸電球の下
手のひらへ小石を乗せ、
お互い見つめ合う。
小石だけが、増え続けていく日々

しあわせに飢えて
しあわせを、
求めていたかどうか分からない。

その後
小石達は私に、
しあわせの作り方を教え、
薪けむりのように
記憶の何処かへ消えて行った。






























 

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