丘にある果樹園

鉄条網張られた果樹園、
林檎の真っ赤な実。

胸がドキドキしてきて、
零れ落ちる涙。

神様!

あの林檎を食べたら、
私は地獄に落ちるんでしょうか?

名の知らない山鳥、
私を見つめている。
私の心を見抜いている。

お願いよ!!
丘の向こうへ飛んでいておくれ・・・

何とかして手で捥り取りたい。
何とかして、口の中に入れたい。

私は、
両手で林檎を包み隠し、
そっと、一口齧る。
甘くて、酸っぱくて、瑞々しい。

丘に鳴り渡る、教会の鐘の音。
夕方の礼拝・・・

あ!!
私は、林檎を落とし、
息を切らしながら
下り坂を駆け抜けて降りてきた。

いばらのとげが、
指に、頬に刺されている。

丘の方を振り向いた。
微かに、見える・・・
山鳥が教会の十字架の上に
止まっているのが・・・

いまでも、見続けているような
そんな気がする。

林檎を見ると、
とげに刺されたかのように
心が痛む。

心が、痛む・・・・・