グムスンお姉さん

何もやる事のない、
金曜日の夕暮れ。

門の前、石の上に座り
草むしりをしていると
グムスンお姉さんがやって来る。

長い髪の毛を掻き上げながら、
私に近づいてきて
ウインクする。

町、一番の美女!
私の永遠の憧れ。

豊かな胸、綺麗な二重瞼、
真っ赤な唇。真っ白な肌。

うちのお兄さんは、
初恋の、
グムスンお姉さんに振られて
絵の具を持ち去り、どこかに消えた。

沢山のチョコレートを、
私の汚れている手に握らせて
グムスンお姉さんは言う。
オンミ!オンミだけは、
あたしの事、嫌いにならないでね!

町の人々は、
グムスンお姉さんを ‘‘ぞうきん” と
呼んでいた。
アメリカ兵士達の ‘‘おもちゃ” とも
呼んでいた。

知っている。
全部知っている。

・・・・・・・

毎週の金曜日、
本当は、
グムスンお姉さんに会うために
私は門の前で待ち構えていたのだ。

ある時から、
会えない日が続いて
少しづつ記憶から薄れていた頃、
偶然、駅の広場で、
タバコを吹かしている、
グムスンお姉さんを見かけた。

私は、
声も掛けられず
逃げるように公衆トイレに駆け込んだ。

私はいつの間にか、
泣いていた。

綺麗なグムスンお姉さんじゃない。
汚れ塗れの物乞い姿!

あの時、私は

私は、逃げるべきじゃなかった。

・・・・・

うちのお兄さんは、
今でも持っているのかな?
17歳頃のグムスンお姉さんの
恥ずかしそうに微笑んでいる、
似顔絵を・・・・・。




 

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