ある友達へ・・・

この季節になると、
あなたを思い出します。

覚えていますか!?
精神の病みに迷ってた10代の頃、
映画館の裏にあるカフェーで、私達は
初めての酒を口にしました。

静かな儀式を行うかのように杯を交わしながら、
歪な世界を批判し、大人や学校への不満を打ちまけては、
これからの人生に欠かせない、生への必要な事などを
真剣に二人で見つけて行こうと約束しました。

酒の名前と綺麗な色にそそられて、
3杯めのシンガポール・スリングを飲もうとしたとき、
店主に怪しまれて、学生の身分だと気付かされお騒ぎになりましたね。

見事に放り出された私達は、
千鳥足で何とか「クァンアンリ」まで行き、海辺の砂浜で
うつ伏せになり眠りました。
口の中がざらざらして頭が痛い。
気が付いたら二人の全身は砂だらけ。
耳の中まで砂が入り、大変な思いをしましたね。

人の少ない朝のクァンアンリ。
映画の画面から出てきたかのように、
砂浜の向こうから、コーヒー売りおばさんが私達の方へ来て
ポットの中から、おいしいコーヒーを注いでくれましたよね!

おばさんは、
昨夜から時々、私達が心配で様子を見てたらしく、
  
‘‘あんた達、親が心配するよ!早くお家へ帰りなさい!
 ここら辺は変な男も沢山いるのに、困った娘たちだね・・・”
 バス代はあるのか?と聞きました。

夜は海辺を歩き回り、するめや酒などを売り、
朝からはコーヒーを売るおばさん。
私達はおばさんから、やさしいこころと何となく溢れる悲しみを感じ、
帰りのバスの中で、今度又、おばさんに会いに行こうと言いましたね。

非行を繰り返す問題少女ではなかったが、
危なっかしい不良の少女である私へ
あなたはほぼ毎日手紙をくれました。
破いて捨てた手紙もあれば、最後の日まで持ち続けた手紙もあります。

二十歳になり、大学の生活を送るあなたと、
工場での労働者として生計を立てている私。
続いた文通は、いつの間にか私から送らず、
あなたからの連絡も避けるようになりました。
まさか、工場まで私に会いに来るとは・・・
自分の作業服姿が恥ずかしくて嫌でした。

その後、
長年書いた日記や手帳、身の回りの物を全部捨てて、
誰にも何も言わず日本へ来ました。


お互いに詩を書いては、
何の恥ずかしさも感じず朗読したり、交換したり・・・
あなたの書いた比喩の無い真直ぐな詩、懐かしいです。

あなたは私の事を、いつまでも純粋に見守ってくれたのに、
私はあなたにさよならも言わず海を渡りました。

あなたに、会いたいです。
あなたに、謝りたいです。

又、会える日までどうかお元気で・・・・・・・




※クァンアンリ(広安里)は釜山の海辺の名称。
   砂浜がとてもきれいな海水浴場です。
















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