家の隣

私の、家の隣は酒屋、
酒屋の隣は桐。

桐の隣は小川、
小川の隣は羊飼い家。

羊飼い家の隣はごみ処理場、
ごみ処理場の隣は空き地。

空き地の隣は巫女の家、
巫女の家の隣は坂道。

坂道の隣は果樹園、
果樹園の隣は火葬場。

火葬場の隣は葬儀屋、
葬儀屋の隣は布団工場。

布団工場の隣は餅屋、
餅屋の隣は美容室。

美容室の隣は孤児院、
孤児院の隣は町役場。

町役場の隣は陸軍部隊所、
陸軍部隊所の隣は山。

山の隣は山、
山の隣は牛市場。

牛市場の隣は川、
川の隣には何もない。

何もない隣は田んぼ畑、
田んぼ畑の隣は小学校。

小学校の隣は製鉄所、
製鉄所の隣は貨物所。

貨物所の隣は駅、
駅の隣は売春宿。

売春宿の隣は銭湯、
銭湯の隣は映画館。

映画館の隣は地下街、
地下街の隣は総合病院。

総合病院の隣は中央市場、
中央市場の隣は結婚式場。

結婚式場の隣は写真館、
写真館の隣は友達の家。


忘れない為、何度も故郷の景色を思い浮かべる。
忘れるはずがないのに・・・。
いつも、何処かを歩いたような気がする。
穴の開いた、私の靴下を縫いながら、母さんは言ってた。
「オンミは、よく歩くね!新しい靴下がすぐ駄目になる。
一人で、遠いとこまで歩き回ると、迷子になるよ!」

何故かな?
本当は私、迷子になってみたかった。
今でも、その気持ちがよく分からないが、
心配してた親の気持ちだけは、よく分かる。


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