フライパンに捧げる歌

そろそろ、
お別れの時間がやって参りました。

これ以上、苦しまないで下さい。

もう、頑張らなくてもいいですよ!

何千回も火に炙られ、過酷な労働の末、
終わりを告げるフライパン。

ついに、我が家のフライパンは、
十五年の短い生を終えました。

丸い裸に、こびりついた傷の跡、
痛々しいです。
もっと、大切に手入れをしてあげれば
よかったのに・・・。
悔いが残ります。

あの頃の、貧しかった恋人達は
毎日の様に、
塩と、胡椒入りのチャーハンを
食べていました。
そして、お仕事を頑張りました。
僅かな収入を手に入れた日、
お祝いの野菜入りのお肉炒め料理・・・・・。
あなたのお陰で、美味しく頂きました。

うれしい事があった時も、辛い事があった時も、
元気が出るようにと、お腹を満たしてくれては、
こっそりと、台所の片隅で、
恋人達を見守り続けてくれたフライパン。

最後の日は、
あなたの為に、想い出のチャーハンを作りましたが、
見事に、お米達がくっついて底から離れませんでした。
その後、いつもより時間をかけ、
ボロボロのあなたを、やさしく洗い拭きあげました。

本当に、お疲れ様でした。

お別れの朝です。

燃えないゴミ袋へ入れられたあなたは、
これからどうなるでしょうか?
生まれ変わるとしたら、
どんな姿になるでしょうか?

お別れは寂しいですが、
私は、忘れません。

あなたから貰った沢山の幸せを・・・。










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