いない




















蜘蛛がいない

家を
開けたまま
どこかへ
行っちまった。

糸を
たぐって
戻ってくるのを
待っていたが、
蜘蛛は
帰ってこない。

張られた綱には
雲が絡まり
太陽が引っかかり
風だけが
とおりぬけて行く。

眩しい午後、
心透ける夏なのに
蜘蛛はいない。


大はしゃぎの少年達が
緑色の虫かごを
笑顔で
覗いている。

木の枝で
突っついている。


虫かごの中で
足の折れた
蜘蛛が
泣いていた
・・・・・・・。





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